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なんでも雑記帖(2008年版)


今年のアンプ作り(2008年11月30日)

今年のアンプ作りは6CA7プッシュプルにはじまり、電流帰還型MOSFETアンプで終わりました。

doraさんからトランジスタアンプ製作の依頼があったのは去年(2007年)の5月のことです。キッカケは例年行われる国立市でのオフ会で、私の真空管アンプを披露したことによります。
トランジスタアンプを作ってくれないか?という doraさんの話に、うへ〜トランジスタか・・・私は内心そう思いました。(^.^)

私にとってトランジスタアンプは未経験ではありません。
学生時代には、今では古典回路になっている準コンプリメンタリ式(すさまじい音質で、作ったのを後悔した)を作りましたし、卒業してからは当時流行(?)のA級全段直結OCLパワーアンプや、差動増幅回路によるCR式イコライザーアンプを作ったものです。

でも40代になってから、私は真空管派になりました。
これは音質が気に入ったこともありますが、トランジスタより真空管の方が作りやすくて丈夫。少々ラフな設計でも、けっこうまともな音が出るという理由からでした。特に作りやすいというのは老眼には助かるのです(笑)。
この点トランジスタは部品が小さく作りにくく、おまけに原理もロクにわからなかったので、うへ〜トランジスタか・・・と思ったのです(笑)

トランジスタアンプの作りにくさの一つは基板にあります。
トランジスタ回路は、プリント基板というものを作って部品を差込み、裏でハンダ付けするのが一般的です。この基板の裏側には回路図どおりのパターンが描いてあって、部品をハンダ付けするだけで完成します。ですから基板さえできていればアンプ作りは実に容易です。

しかしプリント基板は、メーカーが大量生産するのには適していますが、アマチュアがこれを最初から作るには一苦労です。
買ったばかりの基板の裏側には一面に銅箔が貼りついていますが、下の写真のように効率的な回路のパターンを考えてこれを描き、不要の部分を化学薬品(塩化第二銅)で溶かすのです。廃液の処理もまた面倒です。

一方でユニバーサル基板というものがあります。
縦横方向に規則的に開いた穴に部品を差込み、裏でハンダ付けするのはプリント基板と同じですが、回路のパターンはありませんから、別途細いケーブルで一つ一つ配線していかなければなりません。これも老眼にはつらいことです。

そこで思い立ったのが真空管アンプにはよく使われる平ラグ板。
面積上の小型化は無理ですが、作りやすい、間違っても直しやすいというメリットがあります。
プリント基板やユニバーサル基板では配線を直すのに、シャーシーから外してひっくり返さなくてはなりませんが、平ラグなら部品の取り付けと配線はすべて上側でできるので、いちいち外す必要がないのもメリットでしょう。

左:部品実装面(表) 
右:回路パターン(裏)
ユニバーサル基板
表(上)、裏(下)
平ラグ板

#  &  ♭

アンプというものは、ハンダ付けのノウハウと少しばかりの工具類があれば、原理を知らなくても作れます。真空管でもトランジスタでも、組立キットが売られているのはそのためです。

ですからdoraさん用アンプは回路さえ決まればすぐ作れたのですが、今回はいきなりではなくまずトランジスタ増幅の原理から学習し直すことにしました。若いころは全然そんなこと思わなかったのですが、モノの原理もわからずに作るのはかなりの抵抗を感じるようになってきたからです。

学生時代の技術誌を読み直すのもいいかもしれませんが、今では使われない回路もあるのであらためて本を買いなおしました。また今年になってトランジスタやダイオード、オペアンプをかなり買い込み、ブレッドボードで実験したりしてしました。

定本 トランジスタ回路の設計 定本 続トランジスタ回路の設計 ブレッドボード

このブレッドボードというのは、部品を差し込んで結線だけで電子回路の実験が簡単にできます。正直言って、その簡便さに感動しました。
まあ実験と言えば聞こえはいいですが要するに遊びでして、今年(2008年)の春から初夏にかけて、私は休日にはこればかりやっていたんです。

そのうち本の掲載回路をモトに別のものを作ってみたり、部品を違うものに変更したり。1年前の私にはとても考えられないことを平気でするようになってきました。ようやくトランジスタ増幅の基本がわかりかけてきたようです。

結果として doraさんアンプは『電流帰還型』というものにしました。
これは現在のオーディオアンプの主流になっているようで、マランツやアキュフェーズのカタログにははっきりそう書いてあります。
原理はなかなか難しいです。
今でもよくわかっていません。だって実際作って動作を確認すると、本とは違っているんだもの(笑)

でも、これから時間をかけて理解を深めて行こうと思ってます。
なにしろ私にとってトランジスタアンプは今やっとスタートしたばかりなんですから。


アンプ試聴とCD聴きの会(2008年11月19日)

doraさんに依頼されたアンプが完成したので、お披露目をかねた試聴&CD聴きの会を開催しました。
会場は高崎市にあるジャズ喫茶蔵人です。


ここは高崎市倉賀野(くらがのまち)といいます。
戦国時代には武蔵国(埼玉県)で武蔵七党と呼ばれた武士団の一つ、児玉党の子孫を称した倉賀野氏が城を構えたところで、会場の蔵人はその城内になります。

当時の高崎市は上杉・武田・北条といった大勢力の接点であり、倉賀野氏は情勢によってそれぞれに属し最後は豊臣秀吉の小田原攻めの際、越後から南下してきた上杉景勝の攻撃で滅亡しました。

倉賀野城跡の石碑 旧中仙道 本陣跡の碑 追分
右江戸、左日光とある


ここは旧中山道。江戸時代は宿場町として栄えたところで、西から江戸に向かう人達はここで宿泊したようです。皇女和宮も嫁ぐ時、ここを通ったことでしょう。宿泊した旅館は本陣と呼ばれ、蔵人のとなりにありました。

蔵人から200m位東に行くと追分があって、右は江戸、左は日光に通じます。日光への道は、日光東照宮に金幣(きんぺい・・・神具の一つ)を奉納する朝廷の使者(例幣使という)が通ったため、例幣使街道(れいへいしかいどう)と呼ばれていました。

# & ♭

さて今回参加してくださった方は doraさん、マダムさん、TAKASHIさん、miyukiさん、春夏秋冬さん、初参加のkt90jpさん、それと私で全部で7人。マッハさんは急な仕事で来られず、みんな大変残念がっていました。

試聴に使った機器は、アンプは今年になってから作ったものを三機種。6CA7(EL34)プッシュプルトランジスタ試作アンプMOSFETアンプ(doraさん専用機)です。また、CDプレイヤーは私のDENON DCD-1500AE、スピーカーはJBL Project K2 S9500 というもので、蔵人のご好意でお借りすることができました。

このProject K2 S9500 は迫力と繊細さが両立する素晴らしいスピーカーです。
JBLスピーカーの最上位機種であるProject K2シリーズが登場したのは1980年代で、S9500はその第一号機。このシリーズは、現在ではS5800、S9800が販売されています。また最高峰モデルの Project EVEREST DD66000は『次世代フラッグシップモデル』と称しています。

試作機(上)とdoraさん専用機(下) 6CA7-pp Project K2 S9500

 

●持参したCD

For Lovers
土濃塚隆一郎
Quiet Dance 
Fasnations
Liberdade
Bossa Organica 

 

さて私自身、今回のアンプ三機種を同時に比較したのははじめてでして、私の評価はつぎのとおりです。

機種 方式 出力
(片側)
1Wあたりの
材料費
音質評価
低域 中域 高域
質感 量感 質感 量感 質感 量感
試作機 トランジスタ式
(電流帰還型)
3W 1700円 × ×
doraさん専用機 MOSFET式
(同上)
20W 525円
私のメイン機 6CA7-PP
(差動増幅方式)
10W 3500円
1. 音質評価は6CA7-PPを標準(○)として比較しました。
×、△、○の3段階評価ですが、絶対のものではありません。
2. 音質で質感とは音の品位。量感とは音の大きさとしました
3. 出力は理論値ですので、実際には80〜90%位になるかもしれません

試作機には小出力というハンデがあるので、そのぶん評価は割り引かなければならないでしょう。
でも普通の部屋で、普通の音量で聴くにはなんら問題はないと思います。妙ないい方ですがシンプルで飾り気がなく、ホッとくつろげる音です。

自画自賛になりますが、doraさん専用機は抜群のコスト・パフォーマンスです。これは、電源トランス以外の部品代が試作機とほとんど変わらないことによります。
全段直結の威力でしょう、低域から高域まで全般にわたってソツのない音質です。今回たまたま採用したMOSFETは大当たりで、中・低域で試作機に差をつけました。

最後に6CA7-PPを聴いたのですが、我ながら思わずウーンと唸ってしまいました。
低域の量感はdoraさん専用機より上です。このため出力はやや小さいながら迫力が違います。しかし質感ではやや負けましたね。
オーディオで最も重要なのは中域ですが、音に艶と深みがあります。
ボーカルを聴くと6CA7-PPは説得力があり、逆にdoraさん専用機は淡々としているのです。それが悪いという意味ではありません。これが真空管アンプの特長ではないかと思います。

ここのところ(艶と深み)は、昔からいろんな人に議論されてきたところです。
なぜ小出力なのに真空管アンプの音は存在感があるのか、なぜ音質上不利な出力トランスがあるのに、特性的にはずっと上のトランジスタアンプにひけをとらないのか・・・・。

答は今なお出ていません。
オーディオには出力、周波数特性、歪などの測定できる項目以外に、『好き嫌い』というマカ不思議で厄介な要素があるからです。

でも私は、その答えは『出力トランスにある』とおぼろげながら思っています。私はまだ作ったことはありませんが、トランス結合のアンプは周波数特性、歪など、不利な要素を抱えながらも中域の充実度、押し出しのよさはピカ一、という記事を読んだことがあるからです。
トランス結合用のトランス(ドライバートランス)と出力トランスを同じレベルで考えることはできませんが。

出力トランスの一例

今回のニ機種のトランジスタアンプには、真空管アンプに共通する音の傾向があるのも事実です。私はこのサイトのどこかで、同じ人の作ったアンプはどんな構成であっても同じような音の傾向がある、と書いたことがありますが、不思議なことです。

最後に、場所とスピーカーを快く貸していただいた蔵人マスターの根岸さん、参加してくださった皆さんに心から感謝いたします。ありがとうございました。


国立オフ会(2008年5月13日)

5月4日は恒例になった国立オフ会に参加した。
参加者は私を含めて13人。
幹事をしてくださるマダムさんには感謝感謝。

今年は新作の6CA7アンプを持参し、マダムさんのBOSEのスピーカーにつなぐ。
アンプを持参するのはこれで3回目だが、いつも音がちゃんと出るか気になってしまう。
自動車の振動でハンダが外れていなければいいんだけどなあ・・・と(笑)
幸い今年も無事に音が出ました。このBOSEのスピーカー、初めて聴くけどいいですね〜。

二次会も含めて6時間ほど。
ジャズを語り、オーディオを語ったGWの一日だった。

こんな風にセッティング Alone/Heyrim Jeon Liberdade/Bossa Organica  Takes on Pasollini/Antonio Farao 

ラインアンプ改修(2008年4月13日)

私のラインアンプはイコライザーと一緒に作ったもので、6AU6単段にP-G負帰還をかけたものです。ゲインは約3倍。それまでは丁度よかったのですが、新アンプのゲインが計算以上に高く、ボリューム位置が9時ごろで聴くようになってしまいました。これではちょっと不都合なので、アンプ部を外して 入力セレクターとボリュームだけにしてみました。
こうです。

 

しかし・・これでは何の能もない。
第一、せっかくラインアンプの箱に入っているトランスや真空管を無駄に遊ばせていることになります。

そこで回路変更。
アンプはアンプでも、ただのカソードフォロアにしました(右)
6AU6の穴を広げて12AU7にしようかと思いましたが、面倒なのでやめました(^。^)

今回失敗が二つありました。

《その1》
6AU6のプレートから接地される47μは、最初はつけるつもりはありませんでした。なんとかなるだろうとタカをくくっていたのですが、盛大なハム音の前に思いは打ち砕かれました(^。^)
プレートの近くからカソード抵抗(39k)の接地側に47μをつないだら、ハムはピタリと止まりました。

《その2》
オーディオ系のネットでヒーターを直流点火した場合はヒーターバイアスは不用とあったので、単純に信じてバイアスをかけなかったら、ジーという妙な音がしたり、しなかったり。
カソード電圧は約80Vなので85Vほどのバイアスをかけたら、少しは効き目がありましたが、依然としてジーは聞こえます。ひょっとしたら・・と思い、47μのケミコン(Afterの右下の47μ)で接地したら、これもピタリと止まりました。

前記のオーディオ系のネットは私もよく見るし参考にもしていますが、ヒーターを直流点火した場合はヒーターバイアスは不用・・・というのは間違いです。


新アンプ(2008年3月21日)

今日新アンプ、6CA7プッシュプルアンプの紹介文をアップしました。

今回のアンプを作るキッカケになったのは二つあって、最初は一昨年5月に東京・国立で行なった300Bシングルアンプの試聴会です。場所はジャズバーだったので当然ながら我が家よりずっと広く、過去最高とも言える音量で聴きました。

仲間内では結構評判がよかったのですが、実はこの時、私は別のことを思っていたのです。
音量を上げれば上げるほど、なんと言いましょうか、音がスピーカーにべったり張り付いて離れないような気がしてならなかったのです。

次のキッカケは去年7月、高崎・蔵人での試聴会です。
持参したアンプは300Bシングルと6BQ5プッシュプルで、この6BQ5プッシュプルの出力はわずか2〜3Wですが、これが結構音離れ(?)がいいんです。もちろん小出力の限界はありますが。

 300Bは数ある真空管の中でもトップクラスの優秀な球。一方の6BQ5はごく平凡な球。
かけたコストも6BQ5アンプは300Bアンプの10分の1・・・。
これは真空管の違いではない。回路方式の違いではないか・・そう考えるようになるには、それほどの時間はかかりませんでした。以前から6CA7プッシュプルを作りたいと漠然と思ってはいましたが、これが強力なキッカケになったのです。 

少ない小遣い(笑)をやりくりしたり、不要な真空管を売却したりで部品をそろえ、作りはじめたのが今年の1月。 2ヵ月かかってようやく完成しました。ほぼ設計どおりに動作しましたが、同時に前につないだプリアンプの手抜き配線も見つかりました。

 6CA7プッシュプルアンプからハムが聞こえるのです。CDプレイヤーに直接つなげても聞こえません。プリアンプをつないで6CA7アンプのボリュームを上げると聞こえます。

なってこったい、とプリアンプの配線を相当やり直してようやく解決。
シールド線を全ての信号経路に使い、さらに電源部と増幅部のアースを別々に変更したところ完全にハムをとることができました。どんな小規模なアンプでも手を抜いてはいけない。電源経路や信号経路をよく考えて作らなやアカンなあと思った次第です。


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