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電流帰還型MOSFETアンプ


doraさんに依頼されたFETアンプです。基本的な回路はこちらのメイン部と同じですが、電源電圧Up(±25V)に伴って部品をいくつか変更しています。

回路は下記のとおりです。電源回路は省略しましたが、トランスは0-18V3Aがニ回路ついているノグチのPM-183Wで、これを直列につないだ後ブリッジ整流しただけです。保護回路は特に設けず、各CHの電源接続部に2Aのヒューズを入れてあります。

後述のようにSEPP段はMOSFETの2SK3497/2SJ618にしました。
MOSFETなら基本的に熱暴走から解放されるので、人に渡すものとしては安心です。それでもソース抵抗は0.1Ωの予定だったものを0.3Ωにしてわずかですが安全性を高めています。ゲートにつながる100Ωは発振防止用の抵抗です。

調整は2箇所で5kΩの半固定抵抗でアイドリング電流を、500Ωで出力電位を調整します。
アイドリング電流は2つのソース抵抗(0.3Ω)の電圧降下から求めますが、上下のソース間電圧で50mVにしたので83mAです。
出力電位は時間に対して一定にはなりませんが、±3mV程度に収まっているので充分安定していると思います。

 

ケースは 350×250のアルミシャーシーを板で囲みました。
前面はヒノキのむく板。スイッチ取り付け穴の加工(角穴)はしんどかったです(^.^)

実はこの配置で失敗しました。
ボリュームから左chへ行くケーブルは電源トランスと前面パネルの間を通りますが、トランスの誘導磁束の影響で左chにわずかですがハムが出てしまいます。ケーブルはシールド線ですが磁束には無力で、ケーブルの位置を少し変えただけでハムの大きさも変わってきます。

電源トランスと前面パネルの間隔は1cm程度なのでどうすることもできません。電源トランスをあと1cmでも後に配置すればまた違った結果になったでしょう。やむなく最短ではなく、ぐるりを迂回させるように結線して解決しました。もっともこういう解決は解決とはいえないでしょうけれど。

さて今回はSEPP段にトランジスタとMOSFETをいくつか用意して音質の違いを比べてみました。主な規格と感想は次のとおりです。

2SA1939/2SC5196 VCE 80V

輪郭がやや甘くおとなしい音質。若干エコーがかかったように聞こえるためか、ヴァイブの余韻が心地良い。しっとりとしたボーカルの雰囲気は上々。低域の量感は充分だが、ベースが少々もたつくように感じる。

IC 6A
PC 60W
hfe 55〜160
2SB1557/2SD2386
(ダーリントン)
VCE 140V

2SA1939/2SC5196とほとんど違いはない。
ダーリントン接続なのでゲインが上がって入力感度が高くなるかと思ったら期待はずれ。

IC 7A
PC 70W
hfe 5000
〜30000
2SK3497/2SJ618
(MOSFET)
VDSS 180V

明るく鮮明な音。
低域も引き締まり、ダラリとしたところがない。中域はやや硬めでボーカルは若干『色気』にかけるかもしれないが、2SA1939/2SC5196のような『脚色』は感じない。この三種類の中ではベストだと思うので最終的にこれを使うことにした。

ID 10A
PD 130W
Yfs 12

●参考資料
定本 トランジスタ回路の設計(CQ出版)
定本 続トランジスタ回路の設計(CQ出版)
トランジスタ回路の実用設計
(CQ出版)


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