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■ 負荷を解放してはならない(その1)

出力トランス付のアンプを動作させる時は、一部の例外を除いて必ず負荷(たとえばスピーカー)を接続しなくてはなりません。特に出力管が五極管の場合には、負荷を接続しておかないと思わぬトラブルが発生する可能性があります。


 

ここに増幅率μの真空管を使ったアンプがあるとします。
このアンプのゲイン A は次の式で表せます。

A = RL/(RL+rp) ×μ

RLは負荷抵抗、rp は 真空管の内部抵抗です。
この式は三極管の場合で、五極管の時は A = gm・RL と書かれるのが普通ですが、基本となる式はこのとおりです。
さて、負荷が解放されると言うことは、この式で負荷抵抗RLが無限大になることを意味します。
この時、ゲインA はどのようになるでしょうか。

    
A = RL/(RL+rp) ×μ

      = 1/(1+rp/RL)×μ

      = μ

なぜなら rp/RLでRL が無限大なら0(ゼロ)とみなせるから



このように、負荷を無限大にすると増幅率μがそのまま出力となって現れます。三極管のμは、たいしたことはありません。12AX7でもせいぜい100です。
しかしこの現象で注意すべきは、普通のCRによる電圧増幅回路ではありません。CR増幅回路の場合、負荷が無限大になると言うことは、何らかの原因で負荷抵抗が断線してしまうことです。負荷抵抗が断線すればEpが0Vになりますから、問題はありません。

問題なのは、出力管に五極管を使った出力トランス付のメインアンプです(ラジオを含む)。
アンプの動作中にスピーカーとの接続が外れた場合、一次側インピーダンスは無限大になりますが、直流的にはしっかり電源とつながっています。
この時、出力管のプレートには理論上、入力電圧のμ 倍の異常電圧が発生します。μ = gm・rp ですから五極管の場合μは、高内部抵抗とあわせて非常に高い値となるので、相当な高圧が発生することになります。

一方、たとえば6L6 を三極管接続すると μ は 8 になります(4700μmho × 1.7KΩ)。
この程度なら問題はないかもしれません。しかしたとえ三極管接続であっても、ミダリに負荷(スピーカー)を外すべきではありません。

(追伸)
実は、どの位の電圧が発生するか調べたくて、並三ラジオ(42使用)のスピーカーを外して測定してみました。よせばいいのに出力トランスの二次側ではなくて、一次側でデジタルマルチメータを使って測定したところ・・・・・・・ このマルチメータが故障してしまいました。・・・・涙


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