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半導体(基本)


このあたりの説明は電子工学というよりは化学の範疇になります。

■シリコン

半導体の材料として最も利用されているシリコン(元素記号Si、日本名は珪素)は原子番号が14ですので、14個の電子を持ちます。

その様子は左のとおりで、内側から2個、8個、4個の電子が回転しています。
内側10個の電子を描くのも面倒だし、見にくいので一番外郭にある4個の電子を表すため外郭だけを描くことが多いです。

●共有

シリコンに限らず、原子の外郭は電子が2個、あるいは8個の状態が最も化学的に安定した状態になります。
したがいましてシリコン原子は外郭電子が4個ですので、このままでは不安定なのです。

外郭電子は離れやすく、離れてはその原子本来の性質を失いやすいので、このためシリコン原子は他のシリコン原子と結びつき、外郭電子4個を共有することになります。
その様子が左の図です。このように結びついて共有している状態がず〜っと続いているのです。

■不純物を混入する

さて、シリコンに意図的に不純物を混ぜるとその不純物によっては別のものができます。

●リンを混入する

リン(元素記号P)の原子番号は15で外郭電子は5個になります。なぜなら電子数は内側から2個、8個、5個ですから。

これをシリコンに混入しますと、シリコンの場合は外郭電子が4個ですからリンの外郭電子と合わせて9個。
そのうち8個が共有されますから、その結果電子が1個余ることになります。この電子は自由電子として働くようになります。

このようなシリコンをN型半導体といいます。


●ホウ素を混入する

ホウ素(元素記号B)の原子番号は5で、外郭電子数は3個です。これをシリコンに混入しますと、外郭電子は合わせて7個となり、電子数が1個不足です。

どちらかといえば、不足というより、空白の電子でして、穴埋めされるのを待っている状態です。電子を待つということは、あたかもプラスの電圧のような働きがありますので、この穴のことを正孔といいます。

このような半導体をP型半導体といいます。

この異物質を混ぜることをドーピング、混ぜる物質をドーピング材といいます。


■PN接続

P型半導体とN型半導体を組み合わせると面白い現象が起こります。

左の図で、赤いプラスは正孔、マイナスは自由電子です。

左のように直流電源をつなぐと、P型の方がプラス、N型の方がマイナスの時だけ、電流が流れるのです。これはN型にある自由電子が、P型にある正孔に向かって移動するためです。

P型の方がマイナス、N型の方がプラスでは電流は流れません。(実際には無視できる程度の電流は流れる)

■整流(PN接続の働きの一例)

このP型とN型を組み合わせた半導体をダイオードといいます。用途はいろいろありますが、もっとも多く使われるのは交流電圧を直流に変換する目的のものです。この交流→直流変換を整流といいます。

左は交流波形です。たとえば家庭用の100V電源の波形はこのようになっています。中心にある横の直線はいわば基準値でして、ここが0Vになります。

東日本では毎秒50回、西日本では60回、プラスとマイナスが入れ替わるわけです。

ダイオードはP型の部分がプラスの時だけ電流が流れます。つまり交流電気にダイオードを接続すれば波形がプラスの時だけ(左の水色の部分)だけ電流が流れるのです。
その結果、ダイオードから出てくる波形は左のようになります。これを脈流といいます。まだまだ直流(一定電圧で波形というよりは一直線になる)ではありません。波と波の間が空いていてでこぼこしています。
このでこぼこを埋める電気回路(平滑回路という)がありまして、ここを通って初めて直流になるのです。

 

整流回路の一例

ダイオードには整流だけでなく、一定の電圧を維持するためのツェナー・ダイオード、一定の電流を流す定電流ダイオード、別の電気信号を受けて回路を遮断したりつないだりするサイリスタ、江崎玲央奈博士発明のトンネル・ダイオード(通称エサキ・ダイオード)、発光ダイオードなどいろいろありまして、それぞれ用途・製法が異なります。

またトランジスタはP型2個とN型1個、あるいはP型1個とN型2個を組み合わせて作るものです。


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