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電磁誘導


電磁誘導(でんじゆうどう)・・・なんだか難しそうな言葉ですね。実際、突き詰めて学んでいくとものすごく難しいです。でもなんとかわかりやすく書こうと思っています。

まず予備知識として、電流と磁力(磁石の力)には密接な関係がある、と思ってください。
これは簡単ですが
電流の三作用のところでも書きました。

■コイルと磁石

電線をぐるぐる巻いたものをコイルといいます。イメージとしては、リールにぐるぐる巻いてある釣り糸とか、棒に巻いてある凧あげに使うたこ糸を想像してください。

次に磁石を思い出してください。
普通の棒とかU字型の磁石です。小学生のお子様がいれば、机の引出しに入っているかもしれません。

このコイルと磁石には不思議な性質があります。

コイルのそばで磁石を動かすと、コイルの両端には電気が発生するんです。

もう少し難しくいいましょうか?

コイルのそばで磁力の変化があると、コイルの両端には電気が発生します。

これが電磁誘導です。

発生する電気の大きさ(電圧)は、磁力の大きさやコイルの巻き数に関係してきます。

磁力の変化とは、すなわち磁石か、コイルを動かすことで変化します。
動く、動かないは相対的なものですから、磁石でなくても、コイルを動かしてもかまいません。ただコイルと磁石を同時に同じ方向に動かしてはだめなのです。

■フレミング左手の法則

コイルと磁石の関係がおわかりでしょうか?
この二つは密接な関係があるんです。

復習しましょう。
コイルと磁石がごく近くにあるとき、どちらかを動かせばコイルに電気が発生します。
そして磁界の中にあるコイルに電流を流すと、コイルが固定されているなら磁石に、磁石が固定されているならコイルに「ある力」が加わりわるのです。

ではどのように力がくわわるかといいますと、左の図のようになります。 わかりにくいですね。

左手を使ってこのように表すことができます。ちょっとあなたの左手でこのようにやってみてください。

人差し指の方向に磁力線が走っているとき、中指の方向に電流を流すと親指の方向に力が働くんです。

これはこの現象を発見したフレミングにちなんで『フレミング左手の法則』と呼ばれます。

では少し具体的に書きましょう。
2個の磁石の間に電線があって、電流が流れているとします。

磁力の向きはN→Sです(青い矢印)

電流の向きは赤い矢印です。

この場合、磁石が固定されているとすると、電線は上の方に動くように力がかかるのです(緑の矢印)


これ(力がかかるということ)はモーターが回転する原理でもあります。

●モーターはなぜ回る

小学校の理科の時間におもちゃのモーターを作ったことがありませんか?

ヘタな絵で申しわけありません(汗)
下の図は模型などで使う直流モーターだと思ってください。

二つに磁石の中間にコイルがありまして、その線はブラシに挟まれた電極(黄色)につながっています。
電極をよく見ると竹を立てに割ったように切れこみが入っていまして、お互い接触しないようになっています。

《注意》
この図は簡単に書いています。実際のモーターのコイルは何百回も巻かれています。


この二つのブラシに直流電気(例えば乾電池)つなぎましょう。
コイルを流れる電流の向きは図のとおりです。

またコイルの両側には磁石がありますから、N極からS極に向かって右向きに磁力が通っています(青い矢印)。
するとモーターの回転子は・・・この場合ですと右向きに回転するんです。
転子がブラシと接触するところに注意してください。
接触面は当然ながらショートしないように、切れ込みがあって、電流が流れる状態と流れない状態が交互におこります。

左の図はモーターを正面から見たところですが、この図ではコイルに電流が流れます。


ちょっとくどい説明ですが、コイルに電流が流れるとフレミング左手の法則にしたがって、磁力中にある電流には一定の力が生じます。この場合、コイルの右側には下向きに、コイルの左側には上向きに力が働きます。

すると回転子はぐるりと右向きに回転します。
途中で電極が分かれているため電流は流れず力は働きませんが、回転の勢いで半回転し、再び電流が流れる位置になります。これを繰り返すのです。
これがモーターです。

《発電》
では、逆に指先でモーターの軸を回転させればどうなるか。

おわかりでしょうか?

モーターの電気端子には電気が発生するんです。
軸を回転させるということはコイルを回転させることです。軸でなくとも、磁石を動かしても同様に電気が発生します。

これが発電機の原理です。その設備を持つ所が発電所です。
コイル、あるいは磁石を動かす動力に 水や火や原子力が使われているだけなんです。

フレミングの法則はモーターだけではなく、いろんなところに応用されています。たとえば・・

■電気ギター

電気ギターなんて古い言い方です(笑)
これも発電機と同じなんですよ。

電気ギターには特殊なものは知りませんが、大抵左のようなマイクがついていますね。

このマイクは簡単にいえば、磁石とコイルなんです。

そしてギターの弦が金属、それもアルミニウムのように磁石に引きつけられない金属ではなく、スチールであるところがミゾです。

弦をピックではじくと、弦の振動にしたがって、磁石から出ている磁力線が変化します。この変化によってコイルに電気が発生するのです。

もちろんギター・アンプとはこの電気を増幅するためのものです。

ギターのマイクの他には、普通のマイクロフォン、スピーカー、LPのカートリッジ・・・・フレミング左手の法則は様々なところで応用されているのです。

《注意》
発電機(マイクロフォン、LPカートリッジも)の原理はフレミング右手の法則というものの応用です。

発電機はモーターの逆の原理となるので、左手ではなく右手になります。

頭が混乱してしまうでしょう(笑)


■相互誘導

あるコイルに交流電圧(例えば壁のコンセントの電源)を加えたとします。電圧は1秒間に50回(50Hzですから)、あるいは西日本では60回(60Hzですから)変化します。

この時、このコイルに発生する磁力の向きも1秒間に50回、あるいは60回変化するのです。これはコイルを手で毎秒50回、あるいは60回動かすのと同じことなのです。

では、このコイルの磁力をモロに浴びるくらい近くに別のコイルを置いたらどうなるでしょうか?
その別のコイルには、その
磁力の変化の影響を受けて、コイルの巻き数に応じた電気が発生するのです。

これを相互誘導といいます。

左の図をご覧ください。

左側は巻数がN1回のコイルで、壁のコンセント、交流100Vに繋がれているとします。ここで左側のコイルの近くに別のコイル(巻数N2)を近づけると、巻数比(N2/N1)に応じた電圧が発生するのです。

これがトランス(変圧器)の原理です。変圧器の圧とは電圧のことです。

 

例えば左の図のようなトランスがあったとします。(青い枠)


100V側(一次側)はコイルが100回。

反対側(二次側)はコイルがそれぞれ1.5回、200回巻いてあったとします。

一次側コイルに交流100Vを加えると、二次側のコイルにはそれぞれ巻数比に応じて1.5V、200Vの電圧が発生するのです。

《注意》巻数はわかりやすくするために100回とか200回と書いています。実際にははるかに多い巻数です。

このようにコイルはお互いの巻数を変えることによって、自由に発生電圧を決めることができるのです。

これがトランスの原理です。電柱の上にも乗っていますね。これは送電線の電圧6600Vを家庭用100V、あるいは200Vに変換しているのです。

電磁誘導はイギリスの科学者ファラデーが発見しました。
ファラデーは子供向けの科学の本、『ローソクの科学』の著者としても知られています。


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