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プリアンプ


■プリアンプの機能

セパレート型のアンプはプリアンプとメインアンプに二分されます。それぞれ自分のお気に入りのアンプを使いたい人はセパレート型を選ぶわけです。プリアンプとメインアンプが一体となっているアンプ(これが一番種類は多い)でも、内部回路上はプリアンプとメインアンプが厳然と区別されているのです。

プリアンプはメインアンプと違っていくつかの機能を持ちますが、代表的な機能としては次の3点があげられます。

1.入力の選択 ・・・ LP、CD、テープ、チューナーなどを切り替える

2.入力がLP(Phono)の場合、RIAAカーブを補正する

3.入力の電気信号をある程度まで増幅してメインアンプに送り込む

4.トーン・コントロール、フィルターなどで周波数特性を補正する

1.については説明は無用でしょう。
セレクト・スイッチがなければ、聴きたいもの(LPやCD)をその都度アンプにつながなくてはなりませんね。


■イコライザー

さて2.です。
LPレコードは言うまでもなく、録音信号に応じて溝を切り刻んで作ります。(この機械をカッティング・マシンと言います)

ここで重要なのは、低音から高音まで周波数によって録音レベル(大きさ)が異なる、ということです。

具体的に言えば低音のレベルは小さく、高音のレベルは大きいのです。この特性をRIAA特性と言います。(左の青い線

これはLPレコードの特性上どうしてもそうならざるを得ないのです。
ですから、LPレコードをごく普通のアンプにかけて聴くと、高音ばかり聞こえて、低音は小さくて、とてもまともには聴ける状態ではありません。

ではどうすればよいのか。
アンプ側で高域の増幅を抑えて、低域を充分増幅させれば(上の赤い線)、アンプの出力は低域から高域まで均一なレベルになるのです。(上の黒線)

(注意)実際のRIAA特性はこのような直線ではなく、曲線状態になっています。


このように録音の周波数上のレベルを補正して低域から高域まで均一なレベルにするアンプをイコライザーアンプと言い、Phono入力端子のあるアンプには必ず装備されています。
イコライザーアンプにはRIAA特性を補正する役目と、カートリッジで発生した数mVの電圧を増幅し、次のコントロール・アンプに送り込む役目があります。

イコライザーアンプにはMM型カートリッジの場合5mVの電圧が入ります。
でも前述したように、MC型のカートリッジの出力電圧はMM型の1/10の0.5mV程度です。

このため、MC型カートリッジを使う場合には、イコライザーアンプの前にもう一つステップを置いて、カートリッジの出力を10倍ほど高めてやるのです。

その方法は二つあります。
その一つはMC型カートリッジ用のヘッド・アンプであり、もう一つが昇圧トランスなのです。

 

昇圧トランス(DENON)


さて周波数による録音レベルの違いはSPレコードでも普通のテープ録音にもあります。
SPレコードにはLPレコード違ったレベルで録音されているので、LP用のイコライザーアンプでは正しく再生できないのです。

またテープの録音特性はNABと言いますが、普通のテープデッキにはNABを補正するイコライザーアンプが装備されているので、通常はそのままこれを意識せずに使えるのです。

このようにテープデッキの出力信号は補正済みです。CDプレーヤー、チューナーは補正の必要はありません。
これらの機器からの出力信号は0.5〜1Vですから、プリアンプを通さずにそのままメインアンプに入力してもかまわないのです。ただ、入力切替の面倒はありますね。


■コントロール・アンプ

イコライザーアンプやCD、テープなどの信号を受けて必要に応じて次に述べる機能で特性を補正したり、また入力感度の低いメイン・アンプのために少々信号を増幅したりします。

ボリューム これがなければ大変です
トーンコントロール トーンコントロールとは簡単に言えば周波数ごとの増幅度を調節するもので、多くの場合、Bass(低音)と Treble(高音)の2種類があります。
また周波数を細分して各周波数ごとに調整できるものもあります(グラフィック・イコライザー)
ラウドネスコントロール 人間の耳は結構周波数特性が悪く、音が小さい時には低域と高域が良く聞こえなくなります。
このため音量が小さいときには低域と高域を意識的に増幅させるのがラウドネスコントロールです。これはボリュームが12時(つまみの先端が一番上)まで有効です。
私にはこの機能(低域・高域強調)は不自然に聞こえます。

耳の特性については ここ に書いてあります。

フィルター 一定の周波数以上、又は以下の信号をカットするものです。

CDには無用なのでしょうか?
LPを聴く時、高いノイズ(サーという)が聞こえますが、ハイカットフィルターをONにすると、この音を消すことができます。
この時、高音楽器(バイオリンやシンバル)の音も変わってしまうようなフィルターも中にはありますが、このようなフィルターは音質をも変えてしまうので百害あって一利なしの粗悪品です。


■構成

ではプリアンプの構成をまとめてみましょう。MC型カートリッジ用のヘッドアンプや昇圧トランスは省略しました。

おかしいところに気づきませんか?

CD等の出力電圧(プリアンプの入力電圧)は0.5〜2Vとあるのに、コントロール・アンプの出力電圧は2〜5Vですね。コントロール・アンプはほとんど増幅作用はしていないじゃないか、と思いませんか?

そうなんです。

プリアンプでは一番働き者(増幅しているところ)はイコライザー・アンプで、これは100(MM型カートリッジの場合)〜1000倍(MC型カートリッジの場合、ヘッドアンプ・昇圧トランスを含む)の増幅をしています。
ではコントロール・アンプの役割とは・・・・・・これはその一つですが、LP、CD等の入力信号を可能な限り低インピーダンス信号に切り替えてメインアンプに送り込む、ことにあるのです。

低インピーダンス信号については詳述しませんが、こうすることによるメリットをいくつかあげておきます。

1.プリアンプとメインアンプをある程度離して使うことができる(低インピーダンスでないと1mも離せない場合がある)

これはプリアンプとメインアンプをつなぐケーブルの特性上、ケーブルが長ければ長いほど高域が劣化してしまうためです。

2.外部からの雑音を多少防げる

トーンコントロールもラウドネスコントロールも、設計の悪いものはかなり電圧を低下させてしまいます。
例えばトーンコントロール回路を通ると、信号電圧が1/10になってしまうような回路もあります。
そんな時はコントロール・アンプで10倍に増幅して、何もなかったかのようにする場合もあるのです。


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