期間限定夏用アンプ
私が常用している6CA7アンプは発熱がハンパではありません。ヒーターだけで50W、全体で130Wもの電力を消費しますから夏になると手で触れないほどではありませんが、シャーシーがかなり熱くなり何だか心配してしまいます。
そこでこの期間だけ使うということで、省エネタイプのアンプを作ることにしました。また手持ちの部品を目一杯使い、財布にもやさしくしました・・これが一番の目的かな(笑)
回路は次のとおりです。なお、シャーシーのサイズはどちらも同じです。
●トランジスタアンプ
バイアス調整用を含めて片側5石。実にシンプルにしあげました。
電源トランスは手持ちの東栄製(0-12V 2A が2系統)です。トランジスタアンプの場合、電源電圧と出力の関係は √(2×出力×スピーカーインピーダンス)+損失分 ですからどれほどの出力が得られるか、損失分を3Vとして逆算すれば10W位はなんとかなりそうです。(出力を10Wとすると、電源電圧は√(2×10W×8Ω) = 12.6V。損失を3Vとして15.6V。)
元になった回路はMJ誌に掲載された安井章氏のアンプです。
対称形の初段と電力段の接続は、半導体アンプとしては異例のコンデンサ結合になっています。これは初段のソース電流は初段の動作のためだけに使い、電力段へのベース電流供給から切り離すためのものです。電力段は2SD2386/2SB1557 。
Vco -140V Ic 7A hfe 5000〜30000 Pc 70W 10W出力の時、2SD2386/2SB1557 へのIcは12.6V / 8Ω = 1.58A。hfe = 5000 とするとベース電流は0.315mAになります。
このためバイアス回路にはその10倍の3mAを流すことにしました。調整用の抵抗は5.1kです。初段は2SK147/2SJ72 のコンプリ。今は入手難のパーツです。
Vds 40V Yfs 30ms Pd 600mW Idは(とりあえず)2mAとしました。
負荷抵抗は3.3k、ソース抵抗は150は上下共通なので2倍して500Ω(200+150×2)になるので、初段のゲインは 負荷抵抗 / ((1/Yfs)+ソース抵抗)ですから 3300/((1/0.03)+400)で 7.6倍位になりそうです(ここのところ、あまり自信なし)単純なYfs×負荷抵抗にしないのは、ソース抵抗には電解コンデンサでバイパスしないため、強力な電流帰還がかかっているためです。また150Ωは上下で共有するため、ゲイン計算ではこれを2倍にしなければなりません。
さて初段と電力段を直結にすると、初段には本来の増幅用の2mAと電力増幅段のベース用の電流の二つ、つまり5mAを流さなければなりません。これによって動作点がどうなる見当もつかないのでコンデンサ(1.5u)でバイアス回路を遮断したわけです。
ところでバイアス回路と電源の間に入れた5.1kは初段へのネックになると思います。
これによって実質的な初段の交流負荷抵抗が3.3k//5.1kとなり、初段への影響が無視できそうにありません。電源電圧がもっと高ければ、抵抗も高いのが使えていいのですが。初段と電力段の中間にもう一段増幅回路を入れれば解決するのですが、なるべくシンプルに作りたかったのでこうしました。
電源はごく普通のブリッジ整流です。200Ωと1000uを使った平滑回路を挿入したのは6800uのところではリップルが約25mVとかなり大きく、そのハム音が無視できなかったからです。なお、この東栄製電源トランスは本来縦型ですが、このように伏型なのは古いトランス(TANGO ST-30)のカバーのサイズがちょうど良かったからです。
●真空管タイプ
キューブ君を分解して電源トランス(0-120V 21VA)、ヒーター用トランス(0-12.6-16V 1A)と出力トランス(東栄のT1200)を取り出しました。
電源トランスは21VAですから電流はAC160mA程度で、そのままブリッジダイオードで整流すれば150V100mA程度、倍電圧整流すれば300V、50mA程度にはなるでしょう。
SRPPを採用したのは出力トランスが並4ラジオ用の安物なので、なるべく低インピーダンスで信号を送り込み、また直流を重畳したくなかったからです。これによってどれだけ効果があるのか・・わかりませんが(笑)初段は2SK30で、電力段に直結しています。
12BH7のプレート電流がたった8mAで動作させています。
トランスの端子がムキ出しなのでご覧のように木枠で囲いました。この木枠の塗装はサンディングシーラーで下地処理してから、合成うるしを塗っては乾かしまた塗ってと、6回ほど繰り返し、最後に自動車用のコンパウンドで仕上げました。写真映りは悪いですが、現物はテカテカで、鏡の代用になります(これはウソ)。
塗装って時間はかかるし、まったく面倒なものです(笑)