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キューブくん


手持ちの部品をかき集めてこんなものを作りました。コストは1万円。納期は1.5ヵ月でした。

150×150×150mmの立方体

小型のスピーカーを買って
CDプレイヤーの上に乗せました

知り合いの電話・電気工事会社のN社長は、かつてアマチュア無線にのめりこんだ人です。数年前、Nさんからごっそり真空管をもらいました。下取りで引き取った電話交換機やテレビに使われていた真空管で12AX7、12AU7、5AR4など一生かかっても使い切れないほどあります。300Bアンプで使用した5687もその一つです。中には珍しいNECのCZ501もあります。

そんな中に17JZ8というものが2本ありました。NECと三菱製が1本づつです。
はじめて見る12ピンのコンパクトロンで、中には三極管らしきものと五極管らしきものが入っています。五極管の方はプレートも大きく、単なる増幅用とも思えません。ガラスの直径27mm、高さは55mm。外観も写真のように小さくてずんぐりしていて愛嬌のあるものです。

(コンパクトロンの一例)

6C10(左)・・12AX7相当を3本内蔵。
17JZ8(右)・・本機に使用

コンパクトロンとはアメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE社)が1960年ごろ開発した真空管の商品名で、1個のチューブの中に2個以上のユニットを封入し、足は12本。MT管と違ってガラスチューブの下から空気を抜くので頭部がのっぺりしています。なるべく多くの真空管ユニットを1本のガラス管に収めてテレビやラジオの小型化・低価格化を図るのが開発の目的でした。

しかし半導体の集積回路と違って真空管では小型化・多ユニット化にも限界があり、1つのユニットが故障すれば他のまともに使えるユニット共々廃棄しなければならず、必ずしもコストには貢献しなかったようです。さらに当時アメリカでは日本製の安い真空管が大量に出回るようになり、それほどは普及しませんでした。

17JZ8をネットで調べてみたらテレビの垂直同期の発振・増幅用とのことです。五極管部は損失が7Wあります。これだけあれば、ひょっとしたらオーディオアンプの電力増幅として使えるかもしれない、と思ったのがこれを作るキッカケです。

17JZ8の主なデータと特性はつぎのとおりです。テレビ用、トランスレス用だけあって相対的に低電圧・高電流です。

最大定格
  ヒーター 16.8V 0.45A


最大プレート電圧 250V
最大第2グリッド電圧 200V
第一グリッド抵抗 1M(Fix)、2.2M(Self)
プレート損失 7W


最大プレート電圧 250V
プレート損失 1W
三極管部 A級動作
プレート電圧 150V
第一グリッド電圧 -5V
プレート電流 5.5mA
内部抵抗 8KΩ
相互コンダクタンス 2.35m
増幅率 18.8
五極管部 A級動作
プレート電圧 120V
第2グリッド電圧 110V
第一グリッド電圧 -8V
プレート電流 46mA
内部抵抗 11.7KΩ
相互コンダクタンス 7.1m

Ep-Ip特性図の赤い丸はプレート損失7Wのプロットです。それにしてもほれぼれするくらい、直線性が悪そうですが、五極管ってこんなもんでしょうかね?
五極管部はプレート電圧100V、プレート電流45mAあたりに3kのロードラインを引きました(青い線)。3kではちょっと大きいですね。ロードラインはEg=0Vの線の曲がり角あたりにかかるべきなんですが。

それと三極管部のEp-Ip特性図もありましたが、メンドーなのでロードラインは引きませんでした。負荷抵抗、カソード抵抗は経験値です。まあ、音質なんて期待できるようなものではありませんから、と自分で納得してます。

プレート電圧が普通のアンプの半分以下です。いっそトランスレスでやるか、とも思いましたが感電してはかないませんのでやめました。

B電圧が低いので普通のトランスは使えませんから、100V21VAの絶縁トランスを使うことにしました。それにヒーターが16.8Vというヒネクレ者なので16V1Aのトランスも購入。どちらも豊澄製です。出力トランスは東栄のT1200というものです。

12ピンのソケットがなかなか見つからなかったのですが、クラシック・コンポーネンツにありました。1個1000円。ブリッジは新電元の600V20Aというものです。100円。整流後のケミコンは若松で買った特売品47µ200V。10個組で367円。その他CR類は手持ちの中から、テキトーに選びました。

生意気にもNFBをかけて特性の向上はかりました。利得を10倍と仮定して約4dBです。ホントに特性が向上しているかどうか??
でもNFBをかける前はキンキンしていた高域がおとなしくなって随分聴きやすくなりました。初段のカソードからケミコンをはずして内部抵抗を高め、高域を意識的に悪くしたことも効果的だったかも。

出力は片側1W位は出るかもしれません。電力は、ヒーターを含めて小型ハンダごて並に25W近く消費するくせに、大して仕事もしない(出力が出ない)ロクでなしアンプでもあります(笑)

●ケース作り

ケースは木製で、150mm幅の板を加工して150×150×150の立方体にしました。ですから別名キューブ君です(^.^)
天板と背後の入出力端子を取り付ける板は1mmのアルミ板です。全体を黒く塗装しましたが、木とアルミではどうしても色ツヤが違うので違和感があります。そこで前面と側面にも黒く塗装したアルミ板を貼り付けています。

木の厚みが15mmもあるので内部の空間が120×120×120とかなり狭くなりました。下の内部構造のように電源トランスと出力トランスは内側のアルミ板1枚を挟んで非常に接近しています。そこで電源トランス、ヒータートランスには電磁シールド用のショートリングとして銅箔テープを巻くことにしました。それとアルミ板には余った銅箔を貼り付けました。どれほど効果があるかは???
内部の構造はこんなもんです。

今回のお遊びで、ソケットの下側から真空管に向けて青色LEDで照らすようにしました。また中から底に向かって照らしています。LEDは上2本、下4本と6本も使ってしまいました。上の真空管はともかく、下の方はあまり効果がないですね。じわ〜っと光が広がると良いのですが・・・。

青色発光ダイオードでライトアップ

しつこく底面にも

ヒミツのウラ側
半透明のプラ板で光を拡散?

このアンプは遊びで作った、いわばヒマつぶしのような作品です。
音質などまったく期待していなかったのですが、不思議なものでそこそこの音が出るのです。もちろん今回買った安物のスピーカーでは小型ラジオ+α程度の音なんですが、我家のJBLスピーカーにつなげば結構まともな音質です。

それにしてもオーディオにおけるアンプって一体何なのでしょう?
そんな課題を私に投げかけた一作でした。


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