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6BQ5(三結)シングルアンプ

 


夏季限定ということで作ったこれですが、真空管式は友人宅へお嫁入り。トランジスタ式は高域がやや荒く、音質的にはイマイチでした。
それなら真空管で・・・と新しく作りました。

回路はこのとおり、ごくごく普通の二段増幅回路です(詳細はクリックしてください)。

 

●電源部

春日無線のKmB240Fの二次側は、0V-230V-260V AC 120mA DC 75mAが二系統ありますので、両波整流で 230-0-230V DC120mA となるように直列につなぎました。整流後MOSFET 2SK2545を使ったリップルフィルターを通しています。

●増幅部

電力増幅部は6BQ5の三結で、プレート電圧が270Vとやや高いので出力トランスは5KΩとして電流は27mAと抑え気味にしています。この程度のプレート電圧では規定どおり3.5KΩでよかったかも。電流は30mA位流してもいいと思いますが、耳で聞いてもおそらく違いはわからないでしょう。バイアスは10.6Vです。

◎初段管の選定と高域対策

6BQ5のバイアスが10.6Vなので、実効値は10.6/1.41 = 7.5V ですからFETの2SK30でも何とかなりますが、FETの出力インピーダンスは決して低くないので(負荷抵抗とほぼ同じ)、後段のミラー効果によって高域特性が不利になります。なので低rpの真空管を使いたいところです。

6BQ5の入力容量ですが、Cin を11pF、Cout を6pF、三結時のμを19とすると 入力容量 = 11 + 6×(19+1) = 131pF とかなり大きい値になります。これは2A3や300Bの約2倍もあります。ということは、電圧増幅段の出力インピーダンスは2A3や300Bのドライブより低くなければ、高域特性は目も当てられないことになるわけです。

電圧増幅段の出力インピーダンスを低くする手っ取り早い方法は、内部抵抗の低い真空管を使うことです。ですから12AX7は問題外。12AU7や6FQ7、5687はμが小さい。12AT7や6AQ8は直線性は悪いし二つのユニットのバラツキが大きすぎ。おまけに12AT7は二つのユニット間にシールドがないため、1本で左右のチャンネルを増幅をするとクロストーク上の問題が発生します。いや〜なかなかうまく行かないもんです。

手持ちの低rp、中μ、高gmの真空管は6BQ6か6DJ8です。どちらも使えますが結論として6DJ8を使い、低インピーダンスで6BQ5をドライブします。
6DJ8は rpが2.65KΩ、gmが12500、μが33で、内部抵抗が非常に低いですが、これはプレート電流を15mAも流したときのことで、今回のように7mA程度ですと約3.5kΩ位になります。それでも負荷抵抗を10KΩとした場合、出力インピーダンスはその並列抵抗ですから約2.6KΩと充分低い値になります。μは約30です。

ちなみに12AX7の場合、負荷抵抗を 200KΩなら出力インピーダンスは約67KΩで高域が-3dBの周波数は 18kHzですが2.6KΩの本アンプでは466KHzと、いささか過剰ではないかと思われるような特性になります。

◎低域対策

本アンプの出力トランスはインダクタンスが10Hと小さい(シングル用だから当然ですが)ので、低域特性はあまり期待できません。カップリングコンデンサーの容量は0.1μとして6BQ5のグリッド抵抗を430KΩとしました。これによる-3dBの周波数は3.7Hz。さらにカソードのコンデンサーを1000μにして少しでも低い周波数の信号をトランスのブチ込む(笑)ようにしました。

◎利得の計算と負帰還

6DJ8の負荷抵抗は10KΩですが6BQ5のグリッド抵抗が430KΩと充分大きいので交流負荷は9.8KΩとなり、ほとんど影響を与えません。6DJ8でのゲインはμ×RL/(RL+rp) から30×9.8/(3.5+9.8) = 22となります。一方電力増幅段の利得は6BQ5のμ、rp、および負荷抵抗はそれぞれ19、1.5KΩ、5KΩですから19 × 5/(1.5+5) = 14.6。さらに出力トランスの巻数比が1:25なので14.6/25 = 0.58 になります。

電圧増幅段の利得が 22、電力増幅段のそれが 0.58なので裸利得は22×0.58 = 12.8 となります。思ったとおり充分な負帰還をかける余裕はありません。ここでNFBを3dB(約1.4)とすると負帰還をかけた後の利得は ANF = A/(1+Aβ) から1+Aβ = 1.4 となります。β = 39/(39+RNF) より帰還抵抗(RNF)は1.2KΩとします。

 

6DJ8の動作(交流負荷は直流負荷とほとんど同じなので省略)

 

●結果

おとなしい音です。長時間聴いても疲れません。
SN比は抜群。スピーカーに耳を近づけてもハム音はまったく聞こえません。小出力だから当然ですが(笑)。トランジスタアンプの音を聴きなれた、というか、その音に疲れた人には最適かも。なんとなくホッとします。

 

6DJ8(中央)の下にLEDを取り付けました

禁断のウラガワ

 

 


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