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イコライザーアンプ付きプリアンプ




イコライザーアンプ付きプリアンプです。
昔はプリアンプといえばイコライザー付きに決まっていましたから、『イコライザー付きプリアンプ』などという言い方にはどうも違和感がありますね(笑)
今回の回路は今までと違って電流帰還だの差動増幅だのというキテレツ(笑)な方式は一切ありません。ご覧のとおり、非常にシンプルに仕上げました。

 

■イコライザーアンプ

イコライザーはCR型です。NF型はすでにマランツ7タイプでもっているので、今更・・と思ったからです。
CR型ではイコライザ素子には低いインピーダンスで信号を送り込み、高いインピーダンスで受けとめなくてはなりません。ですから真空管で作るなら、例えば12AX7のように出力インピーダンスが高くなる場合にはカソードフォロアなどを挿入してインピーダンスを低くするのがのぞましいところです。


さて初段は高gmの2SK117(GR)です。データシートは ここです。

負荷抵抗は5.1Kで、FETの場合負荷抵抗と出力インピーダンスはほぼ一致します。12AX7などに比べれば格段に低い値ですが、次段は2SK30によるソースフォロアにしました。これでインピーダンスは約5.1Kから560Ωと、約1/10になるはずです。

ドレイン電流は約2mAで、データシートを見れば、この時のYfs(gm)は約12〜13になります(左図印)。
したがいましてゲインは12×5.1=61.2倍。ロスを考えれば50倍位になりましょうか。

FET回路では、発生する雑音はgm(Yfs)に反比例しますからドレイン電流は多いほど有利になりますが、負荷抵抗(つまりゲイン)やバイアスとの関係でむやみに大きくすることもできず悩ましいところでもあります。
本回路の2mAが最適かどうかはわかりませんが、完成後のSN比は納得できるレベルにありますから、まあまあというところかもしれません。

ところでイコライザ素子の計算が簡単にできるよう、 EXCELでこんなもの
を作ってみました。当然ながらこの式を使って思うような特性(音質)が得られなくても、私は一切責任はとりませんからね(笑)  


■フラットアンプ

フラットアンプは昔と違って10倍ものゲインは不要で、2〜3倍あれば充分でしょう。
ここでは2SK30を使ったP-G帰還(D-G帰還?)で、取り立てて言うようなものではありません。

直流負荷抵抗は10Kですが、この後にメインアンプの入力抵抗100Kがつながるので交流負荷は 10K//100K = 9.1K になり(負帰還素子の抵抗は高いので無視しています)、2SK30のgmを1.8mとすると、裸利得は 1.8m ×9.1K = 16.4 になります。ここでβ = 68K/(68K+180K) = 0.274 ですから、負帰還後のゲインは計算上 (1-0.274)×16.4/(1+0.274×16.4) = 2.17倍 になります。


■遅延回路

フラットアンプがこのままですと、電源スイッチをON-OFFする時に不快なノイズが出ることがありますので、簡単な遅延回路を追加しておきました。CRの時定数を利用した回路です。
2SC1815でダーリントン回路を組み、エミッタからは青色LEDでアースに落します。
最初はLEDではなくツェナーダイオード(6V)だったのですが、うまく動作しなかったので(電圧が高すぎ?)、LEDに切替えました。これなら点灯によって動作の確認もできるの
で丁度いいです。

このLEDの順方向電圧は3.2Vなので、ベース電圧が4.5V前後になればリレーが動作します。5秒ほどで動作します。
しかし電源スイッチOFFの時は、470uの電解コンデンサに充電された電荷が速やかに放電されるよう2SA1015をつないだのですが、どうもうまくいきません。 リレーが切れるのに時間がかかって多少ですがノイズが出ることがあります。最終的には回路図のようにLEDとアース間に電源スイッチを入れて強制的にリレーをOFFするようにしました。

ところで回路図のとおり2SC1815のエミッタから0.001uがアースにつながっています。
はじめはこんなことをする予定ではありませんでしたが、リレーが動作する直前にブザーのようにブルブルッと異音を発します。

テストの時は何ともなかったのですが、おそらく発振です。
2SC1815をダーリントン接続したためhfeが異常に高くなったこと。遅延回路基板とLEDとの距離が長くなりすぎたこと(↓下の写真のとおり。)この二つが原因かと思われます。このコンデンサを入れたら異音はピタリと治まりました。


 リレーが動作すると青色LEDが点灯します




■電源回路

教科書的な定電圧回路です。
それもそのはずで、トランジスタ回路のテキストの丸写しです(笑)

トランスが0-12V 0.5Aなので、倍電圧整流してから誤差増幅による安定化電源回路へ。さらにその後トランジスタとツェナーによる簡易安定化電源につなげています。 本来このようなアンプには安定化電源は不要です。初段から3段目の2SK117まで直結ですが、3段目の2SK117が自己バイアスなので多少の電源変動は自動的に補正してくれるからです。安定化電源にした目的はリップル除去以外にはありません。
整流直後35Vの電圧を23Vにするのに、中間に二つも定電圧回路を入れるのは過剰投資だったとも思います。後半の2段目の定電圧回路はいらなかったかもしれません。


■実装

   

 中身は・・・ご覧のとおりスカスカです

 いつものとおり、いわゆる高級部品は一切使っていません




■感想

イコライザーを最初から設計したのは初めてのことです。しかもCR型なのでSN比が心配でしたが憂に終わりました。30年以上前、MJ誌を見て作ったイコライザー(安井章氏設計)より優秀です。無帰還なので左右のゲイン差が気になっていました。モノラルLPを聴いての判断で実測したわけではありませんが、左右のゲインも良く揃っています。

肝心の音質ですが、こんなシンプルな回路の割りにはいいんですよ。
私のインチキマランツ7と比べても遜色ありません・・・とは、ちょっと言いすぎですね〜(^.^)
ただ高域は、半導体アンプ特有のきつさがあります。でも聴いていくうちには角は取れてくるでしょう。


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