自治体のバランスシートづくりがひとつの潮流になっています。逼迫する財政に対応するための当然の流れであろうかと思われます。当町においても導入されたことは記憶に新しいところです。ここでまず、あらためて境町におけるバランスシート導入の理由と理念をお聞かせいただきたく存じます。


ありがとうございます。他に先んじた逸早い英断に敬意を表します。ただここでひとつ留意すべきなのは、全般的な傾向として目的があいまいなまま、バランスシートが一種のブームになっているという一面があると思われることです。言うなれば、作成から活用へと視点を移すべき時期に来ていると解釈できます。自治省方式のバランスシートの作成方法は、ストック情報を収集するという目的から、有形固定資産の評価額について決算統計のデータから集計することとしています。これによって全国の地方自治体が統一的に計算・作成できることになり、自治体間での比較が容易になります。しかしながら、固定資産の評価額は決算統計上の投資的経費の累積であるため、全体的な投資分野とその財源についての説明はできますが、実はそれ以上の分析は難しくなってしまいます。また、ストック情報の収集という視点から貸借対照表のみを作成していますが、これだけを作成しても行政活動の全体を説明するのは自治体の首長や財政責任者にとって決して容易なことではありません。


これらを受けてバランスシートの活用については今後,より具体的に連結とセグメントという第二世代に入りつつあると私は思うのです。連結財務報告書とは、普通会計だけでなく自治体全体の財政状態を明らかにするため、一般会計に特別会計とさらに企業会計をもまとめたものです。現在、地方自治体の行政は多様化した手法により運営されており、その財政は多様化・複合化した事業体から構成されています。普通会計は団体活動の一部を占めるに過ぎなくなっています。そこではまず自治体の事業全体にわたる総合化した財務情報を把握・分析したうえで、団体全体を見渡す観点から効率化すべき分野、サービスを廃止すべき分野等を見極めることが必要です。その際にはいきなり個別分野のあり方を議論するのではなく、限られた財源をバランスよく配分し全体として有効に活用するためにまず森をみてそれから木を見ることが大切です。これが、連結BSが必要とされる由縁です。

セグメントとは「部分」や「区分」という意味の言葉であり、セグメントBSはある特定の施設や行政サービスに関するバランスシートのことを指します。BSを道具として機能させるためには、これを全体としてつかんだ上で、事業別に分解し、特定の部門に焦点を当てることにより、その中に潜在している問題点を浮き彫りにする必要があります。

そんな中で、410日に東京都が「機能するバランスシート〜都の経営を改革する冷徹用具」という報告書を公表しました。ここではストック情報、キャッシュの流れ、行政コスト情報を毎期的確に捉える「機能するバランスシート」の作成と活用を目指しています。そして,機能するBSとは、貸借対照表・キャッシュフロー計算書・行政コスト計算書の3つで構成され、総合的な財政状況を把握するため連結貸借対照表を作成しています。また,事業別バランスシートでは、税金投入型事業における「機能するバランスシート」の活用法について検証するため、都の箱物で代表的な東京国際フォーラム、江戸東京博物館、写真美術館、庭園美術館を取上げて作成しています。減価償却、資金調達における金利負担の概念を加味したことが特徴です。監理団体をも連結し、それぞれの施設運営において、税金投入がないと仮定し、金利負担を加味した場合の収支差額を明らかにしています。特に、行政において弱かった経営の責任を負う仕組みをBSに取り入れた試みは、作成から活用へと局面が移っている中、リーディングケースとして注目されます。また太田市のセグメントBSは、勤労青少年ホーム(下浜田町)を対象として、「教養講座(29講座)の本当のコストは?」「教養講座の市民負担は妥当か? 」「菅平スキー&スノーボードツアーの本当のコストは?」などの視点で分析しています。コストを歳出コスト、歳計外コスト、発生コスト、間接コスト、総コスト、機会コスト、フル・コストで捉え、直接経費だけではない本当のコストを把握しています。運営費用がどれくらいかかっており、それを誰がどう負担しているのかなど施設運営の効率性や住民負担は妥当かなど意外な事実が見えてきそうです。

大変面倒なことを長々と述べて恐縮ではありますが、こういった考えも検討課題のひとつに加えていただけないものでしょうか。

地域経営を促すのは住民との情報の共有です。住民を顧客としてとらえた満足度とニーズの把握のためにも、住民と対話する心で、財務非財務を含んだ財政状態を報告し、これからの計画を話す必要があると思われますので、どうかよろしく御願いいたします。