四重人格 第7回

「手を握りたい」

 みなさん、お元気ですか? 今回の「地味い」は元気がありません。理由は・・ナイショです。何でかって? ミもフタもなくなるからさ、ヘ、ヘ、ヘ。鏡がなくても、自分がきっと卑屈な顔で笑ってんのがわからぁ、ハハ、ハァ・・・。今回はブルーな気持ちとともに、とある日の夕景を散文的にお届けします。心にしみ入るありのまま感動=心が受けた感動(好きなもの)を、感動のまま(好きなよう)に書くのは、苦痛ではない(好きな)んだけどさ。バイクが走り続けるためにガソリンが必要なように、書き続けるために「心のガソリン」が必要なのさ。


散文『闇に灯った明かりを探しに』 作・「地味い」

群青(ぐんじょう)色が空を包み込む、たそがれ時に、太陽は山の向こうに落ちました。
赤みを帯(お)びた橙(だいだい)色が、影絵のように山々の姿を浮かび上がらせる。
その山の中に、小さな光のまたたきが、ひとつ、またひとつ。
あのまたたきは、だれを待っているのでしょう。
それとも、だれかを誘(いざな)っているのでしょう。

「あそこに、だれがいるのかな?」
知らないだれかがいるのでしょう。
だれかの温(ぬく)もりがあるのでしょう。
目に見えない“あったかい(温かい)”があるのでしょう。

そんなことを思うとき、あの人の手を握りたい。
冬の散歩道で、冷たい手をすりすりとあたためてくれたあの人と。
橙色のスクーターにふたりで乗って、冷たい風を頬(ほほ)に感じた幸せ。

独(ひと)りのきょうは、どこまで走ろうか。
あの人が待つ、あそこまで走ろうか。
僕は、まだ走れるだろうか。
橙色のスクーターも、もう無いし。


でも、あの人の手を握りたい。
ビートルズも「抱きしめたい」とは歌わなかった。
「I want to hold your hand」と歌ったよ。

手をつなぐと、あの人はとっても笑顔。
あの人の笑顔は、僕を幸せにする。
あの人の笑顔は平和だからこそ、僕の幸せも平和だからこそ。
今年のクリスマスも、「Happy Xmas(War is over)」と歌いたい。

世界中に届け、この願い。
僕は静かに想う。
いつの日か、あなたとも手をつなげるといいな。

(2001/10/2「地味い」記)

僕の自慢だったVespa 150 Sprint Veloce 。
橙色のスクーターは、いまごろ日本のどこかを走っているでしょう。

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