川の環境(川のかたち・川のしくみ・ダムなど河川構造物と河川環境・魚と人体寄生虫)
● 川のかたち |
海や湖、森林や田畑などから、太陽の熱で水が蒸発し、それが集まって雲となります。雲の中の水蒸気がいっぱいになると、雨となって地上に降りそそぎます。 地上に降った雨は、一部は地面にしみ込んで涌き水となり、一部はすぐに川へ流れ込み、それが一緒に川となって海へもどっていきます。 川は、水が流れるだけではなく、岩石や土砂を運び、土の中から溶け出した養分や水辺の植物の落ち葉などが腐ってできた養分も運びます。 川は、あっちこっちにぶつかり、地面をけずったり(侵食)、土石をためたり(堆積)したりして、瀬や渕などをつくり曲がりくねり(蛇行)ながら、流れていきます。川は普通、地理的または感覚的な方法で、上流・中流・下流に分けられています。 |
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上流域 川は山地に水源を持つのが普通です。山の中を流れる川は、勾配もきつく流れが急です。 |
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上流域 この写真は、六合村にある鋼管休暇村内の穴地獄という酸性の川です。緑色に見えるのはチャツボミゴケという酸性の川にしか生息しないコケで非常に珍しくここと阿蘇など数箇所にしかないと言います。 |
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上流域 箱島湧水の状況です。山の大木の根から大量の水が湧き出しています。 |
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上流域 この写真は四万川の甌穴と呼ばれているものです。川のくぼみに石が入り、水流で回転を続け岩に穴をあけていったものです。 |
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上流部 吾妻川支流の温川です。角ばった石と多少角が取れた大きな石があります。瀬と渕が交互に存在していますね。渓畔林も残されて生物層も豊富な河川となっています。イワナ、ヤマメが釣れます。 |
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中流域 中流では、川幅が広がり、流れもゆるやかになります。 |
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中流域・利根川 群馬県庁と利根川の中流域です。河川敷は高度に利用されています。台風時の増水では河川敷の運動場や駐車場に水がのってしまうこともしばしばです。しかし、そうやって水が遊びながら流れることも水利用や生き物の避難場所として必要なのですね! |
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下流域 下流では、流れはゆるやかになります。大きな石は無くなって、川底には、細かな砂利や砂、泥が堆積します。 この写真は、群馬県の水郷と言われる板倉町の谷田川です。水はゆったりと流れ、岸辺はアシ原になっています。この先は渡良瀬遊水地に流れ込みます。ゆったりとして美しい風景ですね。 |
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人工物がある川 石積みで護岸が出来た川です。傾斜がきつく川に入る事が出来ません。でも、コンクリートで固めてないため、見た目も多少良く、ある種の生き物には生息場所として利用できるでしょうか? |
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石積みの水路 水路も天然石の石積みだと風情が有ります。ただし、この石積みは隙間をモルタルで固めてあるので、生き物のすみかと成りづらいかも知れません。モルタルで固めない空石積みなら生き物にとっても多少は優しくなるのでは!。 |
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人工物がある川 中流域に出来た落差工。こんなものでも川を分断してしまいます。この程度の落差工でも魚が登る事は出来ません。そして、工事のため河床が平らにされて生き物が棲む環境が少なくなってしまいました。 |
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人工物がある川 コンクリートと石積みで固められた川です。ほとんど水路となっていますが水車が景観を和らげていてくれます。でも、安全柵は疑岩かな? |
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人工物で固められた川 コンクリートブロックとコンクリート護岸で固められ、床固め工も施された人工的な川です。水をいかに早く流すかだけを目的とした水路になってしまいました。石も無く生き物のすみかはほとんど有りません。 |
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利根大堰 利根川で最大といっていいほどの横断工作物です。東京都や埼玉県のほとんどの飲料水や農業用水をここから取り入れて配水しています。 |
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利根大堰の魚道 これだけ広い川幅の中でこのような魚道が三箇所しかありません。魚は流れの強いところを目指すといいますが・・・この入り口を捜して登る魚がどの位いるのでしょうか? |
坂東堰 利根川の上流部、渋川市に作られた堰です。魚道は写真の一番奥に一箇所、それも勾配はきつく、さらに最下流の上り口の段差が大きく魚が登れる状態になっていません。ここで川は完全に分断されてしまってアユやサクラマスなど多くの魚が登れません。 |
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長野堰 烏川の榛名町にある農業用水の堰です。ここでほとんどの水が取水されてしまってます。ここまで海産のアユが遡上してきても・・・サケが遡上してきても・・・。 |
● ダムなど河川構造物と河川環境 |
【はじめに】 |
【ダムなど河川構造物と環境の現状】 【1:生態的システムに与える影響】 |
河川のはたらきには、水の流れによる土砂の浸食、運搬、堆積(川の3要素)があります。時として起こる洪水は特にこのはたらきが大きく、これが繰り返されることによって浮き石の多い瀬や砂礫底の淵、入り江となって流れのゆるやかなワンドなどがつくられています。 |
【2:水環境に与える影響】 |
【@ 冷水現象】 |
● 川のしくみ |
川の働き
水の流れは、その強さによって地面を浸食したり、土石の運搬をしたり、土砂を堆積したりします。(川の三要素と言います。) |
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水をきれいにするしくみ 昔から川の水は「三尺流れればきれいになる」と言われ、川には水をきれいにする力があると考えられています。 |
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川をきれいにする生き物 これはヒゲナガカワトビケラの網です。この幼虫は川の石と石の間にくもの巣のように網を張って流れてくる落ち葉などを食べています。 この幼虫は魚の餌になって、食物連鎖の大切な一部分となっています。 |
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● 魚と人体寄生虫 |
魚が感染源となる人体寄生虫 まず、一番有名な日本海裂頭条虫(サナダムシ、以前は広節裂頭条虫と混同されていた)ですが、よく教科書にサケ・マスの生食が危ないと書かれていますが、淡水でしか過ごしていない魚には感染していません。 サケ科魚は海で本虫に寄生されるので、危ないのは天然のサクラマスやサケ、カラフトマス等です。 以下、淡水に関係ありそうな寄生虫と人への感染源を掲げます。 ・肝吸虫(肝臓ジストマ):モツゴ、モロコ、タモロコ、ヤリタナゴ、ウグイ、コイ、フナ、ワカサギ等々 ・横川吸虫:アユ、ウグイ、オイカワ等 ・ウェステルマン肺吸虫:モクズガニ、サワガニ、アメリがザリガニ ・宮崎肺吸虫:サワガニ ・大平肺吸虫:ベンケイガニ、クロベンケイガニ等 ・棘口吸虫:ドジョウ、蛙、イモリ ・マンソン裂頭条虫:へび、とり、カエル ・有線条虫:まむし、シマヘビ ・広東住血線虫:マイマイ、ナメクジ ・有棘顎口虫:らいぎょ、ドジョウ、蛙 ・剛棘顎口虫:ドジョウ(輸入) ・日本顎口虫:ドジョウ、ヤマカガシ、ナマズ、ヤマメ、ウグイ、ブラックバス ・ドロレス顎口虫:サンショウウオ、マムシ、渓流魚、ブルーギル、この虫は日本ではイノシシを終宿主としていて、人へは感染しないと考えられていましたが、これまでに20例以上の報告があるということです。まあ、この虫に感染しても命に関わることはなく、皮下に虫の這った跡がミミズ腫れになる(皮膚爬行症)程度です(日本顎口虫も同じ)。 渓流魚には人体寄生虫はいないと書こうと思って調べてみたのですが、日本顎口虫はヤマメでも見つかったことがあるみたいです。でも、最近10年の症例は10件ほどですから、心配することは無いと思います。 色々、寄生虫の名前を挙げましたが、寄生虫は複雑な生活環を必要としており(成長に中間宿主が必要な上、宿主特異性も強い)、飼育環境下では、その環がつながらないため、養殖魚では基本的に安全です!(強調) 蛇や蛙、ナメクジなどの生食は危ないのでやめましょう。また、ホタルイカの生食は旋尾線虫の危険があります。 (参考文献:魚介類の感染症・寄生虫症、図説人体寄生虫学) |