室堂から大日三山を歩く 剱岳を眺める山旅

 

2013年度の山岳部OB荒井山行は7月29〜8月1日。参加者は荒井リーダー、関SL、永井、石川、山田の5人。

29日室堂「みくりが池温泉」集合(泊)。30日;雄山―大汝山―富士の折立―真砂岳―剱御前小屋(泊)、31日;剱御前小屋―新室堂乗越―奥大日岳―大日小屋(泊)、8月1日;大日小屋―
大日平山荘―牛首―登山口下山 の計画だった。

 越後湯沢でほくほく線に乗り換えたころから雨、富山、立山駅も雨、立山駅で関西からの永井、関さんと合流、室堂4時10分着。宿は「みくりが池温泉」、バスターミナルから15分ほどだが雨が強く半袖半ズボンの身には寒くて震えながら宿まで。

1年振りの全員集合。リーダー荒井さんから早速提案、雨は明日も続きそう、この宿で1部屋だけ空きがある。ということで部屋を確保、明日は停滞にした。関東で早々開けた梅雨が北陸ではまだのようだ。

翌日、午前中降り続いた雨は午後から上がり日が差し始めた。予定の計画を室堂から新室堂乗越―奥大日岳―大日小屋に変更、午後からはルート確認と室堂散策。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130811_712977.jpg
みくりが池のさきに一の越、雄山

31日は朝から快晴、花・花・花の大日三山を快適に歩いた。大日岳をピストンして外で宴会を予定したら雨がぽつぽつ、どうやら明日の空は怪しそうだ。この日の山行記は後述。

 

8月1日は朝から強い雨、小屋のおかみによると大日平小屋までに沢を三つほど渡渉しなければならない、増水すると危険ということ。・・・さてどうするか、選択肢は三つ。
1:そのまま予定のルートを下山する・・・沢の増水とその先に落石が心配な牛首がある
2:停滞して翌日下山・・・天気の保証はない、状況で大日平に下りるか、室堂に引き返す
3:室堂へ引き返す・・・強雨のなか鎖・梯子・雪渓下りは往路とは条件が違うが

リーダーは迷うことなく3.で行こう、ということで6時過ぎ雨のなかを出発。アップダウンが強く鎖・梯子がある奥大日まで慎重に進む。この先は新室堂乗越先雪渓の下りだけ。雪渓手前で立ったまま軽い昼食、断続的な強雨のなか雪渓を下りきりホット一息。バスターミナルに12時半着。良い判断だった。

http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130811_712978.jpg

 

ルート変更で室堂・美女平を往復、車窓から称名の瀧を2度拝観出来た。これは立山に逗留した荒井さんが近くまで行って撮った写真、大量の雨で水量が多い。

立山駅前のホテルで入浴。立山泊りのリーダーを除き、電鉄車内で打ち上げ、予定通りその日のうちに自宅に戻った。

 

みくりが池温泉とボーマンさん

室堂「みくりが池温泉」は掛け流し温泉の宿、2段ベッドに荷物を置いて早速温泉へ。ここは
2400m、日本一高いところにある硫黄の酸性湯、冷えた体を温めた。

夕飯は7時からで時間はたっぷり、1年振りの話題をビール・ウィスキーでしばらく。夕食は山の宿とは思えないなかなか豪華な膳、ビールはピッチャーでたっぷり。食後ベッドでしばし歓談、何時寝たのか分からず朝まで。

朝湯の後の朝食はバイキング。食材は豊富で野菜たっぷり、納豆・果物もある。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130811_713055.jpg
バイキング:HPより、味付けもいける

 

この宿にベアンテ・ボーマン撮影の山岳写真が沢山飾ってある。たまたまこの人が投宿していた。彼もこの日は宿で停滞、2011年まで東京交響楽団の主席チェリストで宣教師、東響を定年退職した今も現役で西本智実主催のオーケストラなどで演奏しているとのこと。オーケストラ・シリーズで東響は何回か聴いた、コンマスの大谷さんは目立ったがボーマンさんは知らなかった。そんな話と東響の指揮者などについて少し話した。この小屋で日本人ピアニストの奥さんとジョイント・コンサートを何回かしたということで宿の皆さんとは仲良し。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130811_713018.jpg
ボーマンさん、Yahoo!検索(写真)より

彼の山岳写真は趣味の域を超えている。全日本山岳写真協会のメンバーで受賞作品も多い。今回は約20日の予定で立山から針の木まで撮影登山、機材だけで12s、野営装備も持参ということだから相当な荷物。60半ばだが体力は十分のようだ。

山談義様々、写真に詳しい荒井さんとはながなが写真談義、機材やフィルムを見せてもらったがバカチョンデジカメとは桁違い。撮影には数時間かけることはざら、我々の理解の外だ。明日は
3時に宿を出て雄山に行き撮影チャンスを待つという、良い撮影が出来ますように。

ネット情報ではスエ―デン生まれ、シベリウス・アカデミーなどで学び31年前に東響の主席奏者になり東響の顔・重鎮でファンも多かったということだ。

停滞で時間はたっぷり、彼も我々との会話には興味があったようで御互い良い時間が過ごせた。宿には彼の写真集が置いてある、荒井、関さんが購入してサインしてもらった。良い一期一会。

 

室堂散策

室堂は何度か訪れたが、通過するだけだった。30日の停滞日は午後から雨が上がったので新室堂乗越経由大日岳へのルート確認と機会がなかった室堂周辺を散策した。

宿を出てエンマ台から石段を下る、この辺は地獄谷の硫化水素ガスが流れてきて目が痛い、右に血の池、左にりんどう池を見て雷鳥沢まで大下り。

 

http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130814_717616.jpg
血の池:赤い土の池塘、今朝までの雨で水が多い

 

広いキャンプ場にはテントが数十張、奥に管理棟。小さな雪渓を下り雷鳥沢の材木橋を渡る、沢沿いに歩くと別山乗越との分岐に出る。さらに沢沿いに進み、少し登ると木道に出る。この辺はコバイケイソウやハクサンイチゲが多い。明日登る結構広い雪渓が見渡せるところで引き返した。ここまで40分ほど、戻りの登りは結構きつかった。

エンマ台からみくりが池の北側を歩き日本最古の山小屋「立山室堂」を見学、北室・南室の2棟があり何れも1700年代に建てられたもの、平成4年から3年がかりで解体修理され当時の姿を取り戻したとある。北室には宗教登山に関連する資料の展示がある。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130814_717617.jpg
展示品:右下は雄山から見た大日連山


 宿に戻り温泉につかってからしばし酒盛り歓談、7時から昨日とは一味違う料理とピッチャー。
こんな停滞もたまにはいい。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130814_717621.jpg
みくりが池の上に立つ宿はホテル立山か

 

大日岳三山を歩く

室堂三日目の朝は快晴。6時からバイキング朝食、準備体操をして7時宿発。今日歩く大日連峰が朝日に輝いていた。


出発前、勢揃い
http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719310.jpg
地獄谷の先に大日連峰:宿から

 

昨日の偵察ルートを歩き、雪渓手前で休憩。雪渓はバケツになっていて歩きやすい、まっすぐ登り左にトラバースして登山道に出た。少し登ると新室堂乗越、その先の室堂乗越を通過、この尾根から剱岳・立山連峰が雄大に望める、北には毛勝三山がどっしり、手前にはこれから登る奥大日岳が大きい。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719311.jpg
室堂乗越付近から剱岳を望む


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719312.jpg
毛勝三山も大きい、右端に白馬がチラリ


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719313.jpg
右に奥大日岳、手前ピークの左を巻いて行く


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719314.jpg
室堂、中央に立山連峰右に浄土山:奥大日手前から

 

奥大日手前南斜面のガレ場をトラバース、この辺は花・花・花。コバイケイソウの大群落、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、シラネニンジン、可愛いミヤマリンドウ、など等。雪渓に雷鳥親子が姿を見せてくれた。雪渓の端を歩く雛を陰から親鳥が見守っていた。

奥大日岳は2605m、手前に2611mのだらっとしたピークがあるが登山道は立ち入り禁止になっている。10:35着、20分の大休憩。アルパインの女性主体グループが到着して賑やか、室堂から日帰りピストンという、他にも奥大日ピストンという単独行山ガールが2人いた。さすが花の山ということか。

 

http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719315.jpg
雷鳥のひな三羽、雪渓の手前で親鳥が見守っていた

 

少し戻って大日小屋への道に出る。ここからは鎖・梯子のある急勾配を下る。左手には北アルプスの主峰が連なっていた。


http://img-cdn.jg.jugem.jp/b54/1935775/20130815_719316.jpg
薬師、笠、槍などを遠望する

昼食11:55/12:30、宿の弁当は押し寿司。良い味だが御飯がボリュームたっぷりで完食無理。
七福園らしい岩の群れ、展望のない中大日岳を通過して一下りすると大日小屋、1:45着。

朝の快晴は昼過ぎから雲が多くなり、小屋に着いた頃は怪しげな空模様になった。小屋に荷物を置いて大日岳をピストン、2:30/:15。

缶ビールはしっかり冷やしてもらっている、さて外で宴会と思ったら雨がぱらついてきた。部屋に移動、混んでいると言われていたが2段ベッドの下6人用を5人で使わせてもらった。

宴会スペースは十分。恒例関さん持参のポークハムを摘みに夕食まで歓談しばし。夕食後は小屋従業員のギター演奏、富山大学学生の余興などで盛り上がった。引率の先生はトランス・ジャパン・アルプス・レースの実行委員。日本海から駿河湾まで北・中央・南アルプスを1週間で走りぬく超過酷なレース、ランナーがどんな幻覚症状を示したのか聞きたいですか、ということだったが何故かパス、このレースにご理解のほどということだった。

夜中から雨音が強い、朝になっても止む気配はない。最初に書いた通り、室堂に引き返す決断、実行。無事下山した。

2013年8月15日 山田記