前穂高岳登攀を懐古する
1964.7.31北尾根(前穂、奥穂、涸沢 8.1三峰リッジ 8.2東壁Aフェース 8.2三峰
フェースを登攀する。登攀者 大川、近藤、生形、清水。
山岳部報 第6号前穂高岳奥又白の記録より
8月2日 快晴夕立
前穂東壁 北壁 Aフェース
北壁の松高カミンはカミンとは名ばかりの凹角なり。多少ハングはついてはいるがさほど困難ではない。T1よりT2への登りはクラックかチムニー状でこれも容易。T2よりのAフェースは岩が固くフリクションが良くきき楽しいクライムができた。最後のつめはクラックで足を一ぱい上げて頂上直下のテラスに出る。
記録 発:5.10―取つき:6.30―登攀終了点:8.05―前穂頂上:8.15 三峰フェースへ
懐古前穂高岳 孟甫
攀登峭壁露晶晶
瀑布石蹊爽気生
絶頂欲窮人跡少
懸崖坐草動吟情
読み下し文
前穂高岳を懐古する たけお
峭壁を攀じ登る 露晶晶
瀑布石蹊 爽気を生ず
絶頂を窮めんと欲す 人跡少なり
懸崖の草に坐すれば 吟情を動かす
意訳
前穂高岳を懐かしく思う
朝露がきらめき光、嶮しく聳える岩壁をこれから攀じ登る
石の道を行くと大きな滝がある、水しぶきが冷たく爽やかだ
東壁の頂上を征服しようと早朝出発、他に人影は見えない
高く切り立った崖の草付きに座ると詩歌を作りたくなった
(テラス) (当時は武者震いがした)
注
峭壁(しょうへき)=けわしく聳えた山
晶晶(しょうしょう)=きらめき光さま
瀑布(ばくふ)=滝
爽気(そうき)=爽やかな気持ち
絶頂(ぜっちょう)=山の頂上
懸崖(けんがい)=高く切り立ったがけ
吟情(ぎんじょう)=詩歌を作る心持