群馬大学山岳時代の懐かしさをこめて漢詩を詠みました。大学時代の3編と昨年の丹沢縦走の1編を山岳部OB会ホームページへ投稿致します。 42S 生方

 

           剣岳を懐古する

  

           剣岳より東大谷、早月尾根を望む

  

            剣沢大雪渓     昭和39  1964.7.10

          

   懐古剣岳      孟甫

    沖天絶壁儼然

      累累石原朝露晞

      廣漠冰河侵蝕谷

      珠峯絶頂雲煙飛

書き下し文

        剣岳を懐古する     孟甫

     天を沖す 絶壁厳然と輝く

     累累たる石原 朝露晞

     広漠たる氷河 侵食の谷

     珠峰の絶頂 雲煙飛ぶ

意訳

      剣岳の夏山合宿を懐かしく思い出す  たけお

 

 厳めしくおごそかに輝いた嶮しく切り立った崖(がけ)を空高く登る。

 (剣岳の岩壁はスケールが大きく、私に恐怖を与え、武者奮いがした。)

 

 石が高く積み重なったガレ場の夜露が朝日で乾いてゆく。

 (モレーンの上に張ったテントの中から望むとモルゲンロート(朝焼け)が素晴らしい。)

 果てしなく広々とした、氷河に削り取られた谷間の大雪渓で訓練をした。

 (広々としたカール上の大雪渓で滑落時の制動訓練で技を叩き込まれた。)

 

 玉のように輝いた峰の最上の頂に雲ともやが飛んでいる。

 (これから目指す剣岳のピークに雲がかかっている、剣岳を征服するぞ。)

  天を沖(ちゅう)す=空高く衝く、空高く登る。

  絶壁(ぜっぺき)=けわしく切り立った崖(がけ)

  起こる=奮い立つ

  累累たる=高く積み重なる

  石原=ガレ場

  晞=かわく、夜が明けた

  広漠=広々としてはてしない

  珠峰=玉のように輝いた峰

  絶頂=山の上の一番高い所、最上の頂き