2012スイス山行

2012年7月6日から20日

 

メンバー 中村左千夫、増田幸雄、小宮山和也、望月恭一 ゆきわり会(日本山岳会)の仲間

 

小宮山さんは60代最後、若いころは南アルプスで鍛えてきたという。中村さん、増田さんは、立派な70代、望月は一週間前に喜寿を迎えたところである。少し意欲的な山歩きをしてみたいと考え、手作りのスイス山行を計画した。

 

東は、スイスからイタリーに入ることで名高いシンプロン峠、西はシャモニーに通じるフランス国境までをぺニンアルプスというが、その中の登山基地Zinal(チナール)に入って、多くの4000m峰に取り囲まれ、チナール氷河の源流に位置するCabane du Grand Mountet(グランムンテ小屋)に一泊することが、まず最初の我々の目的であった。さらに目の前の氷河のすさまじい氷の滝、Icefallを見ようとCabane de Moiry(モアリ小屋)をすでに予約していた。このモアリ小屋に宿泊後、オートルートの一部である峠を越えて、Arolla(アローラ)まで足を延ばそうと考えた。

最後に、Zermatt(ツエルマット)のOver-Rothorn(オーバーロートホルン3415m)にのぼり、マッターホルンをゆっくり眺めるばかりでなく、今まで眺めてきた数々の4000m峰を東側から、Dent Branche(ダンブランシュ4358m, Ober Gabelhorn(オーバーガーベルホルン4063m, Zinalrothorn(チナールロートホルン4221m, Weisshorn(ワイスホルン4505m)を一つ一つ同定出来れば楽しいとスケジュールに組み入れた。

 

(上図はSWISS ALPS by Kev Reynoldsから借用した)

76 成田発、チューリッヒ1泊

77 ベルンのアルプス博物館を見学後チナールへ

 

78 明日からの天気予報は良いので、グランムンテ小屋を予約する。(現地で天気予報を確認してから予約できる) 今日はホテルワイスホルンに往復3時間、足慣らしのハイキング。

ホテルワイスホルンのテラス

ポーランドから来た若いウエイトレスに目の前に見える山の名前を聞いたがわからず、

ホテルの女性支配人が出てきて教えてくれた。

左から雲に隠れたマッターホルン、Point de Zinal そして右がダンブランシュ

説明: C:\Users\Mochizuki\Pictures\2012-07-11 002\P1000195(3).jpg

チナールの街並みと南奥にそびえるベッソ(3668m)、明日はこの西山麓から登り始める

79 いよいよグランムンテ小屋へ(2886m

チナール(1657m)から標高差1211mで難易度3(トレッキングコースとしては最高の難度)

小屋までの所用時間4時間半とガイドブックに書いてある。

天気予報は今日、明日ともに晴れ、登山隊長中村さんのもと9時スタート、緩やかな上り道を川に沿って1時間半ほど歩き、チナール氷河から流れ出た急流に架かった小さな木の橋を西から東にわたり、ネコヤナギなどの灌木を通り過ぎるとベッソ(Besso)の西岸壁である。ジグザグの急坂をゆっくりと登る。登り切ったテラスには、ゲンチアンやサクラソウ咲き乱れている小さなお花畑だ。日差しは強く、増田さんは雪渓の雪で首を冷やしている。スイス人の家族がゆっくり休憩しており、子供たちはトランプに一生懸命であった。登山も生活の一部で、日々の暮らしに溶け込んでいるように見えた。

Grand Cornier (グランコルニエ3962m)が見えてきたほっと一息中村さんが地図を広げている

 

次の山稜に取り付くため、いったん悪路を下り、落石除け屋根つきコンクリート道を通り抜け、いよいよ最後の登り道である。固定ロープや鎖が掛かり慎重に一歩一歩進む。小屋まで30分と書いてある場所でホッとしていたら、ベルギーの若い二人連れと先ほど出会ったスイス人の家族に追い越された。自分の庭のように歩いている。大きな岩の飛び石と登りが続きやっと小屋に到着した。合計7時間の行程であった。

左ダンブランシュと右グランコルニエ(小屋から)

初登頂はそれぞれ1862年と1865年だが、グランコルニエの初登頂者はマッターホルン初登頂(1865)で有名な

ウインパーである。たぶんここで足慣らしをしたのち、マッターホルンに挑戦したのだろう

グランムンテ小屋 (スイス山岳会ローザンヌ支部所有 115ベッド)

 

ヒマラヤのベースキャンプに着いた感じ。さっそく宿代一人76スイスフランを払う。質素だがしっかりした山小屋である。まわりの4000峰に登った後であろうか、ザイルやアイゼンなどを整理している人たちが2-3グループあった。我々の寝床はゆったりと確保されていた。今晩は定員の60-70%というところだろうか。夕食は各グループに分かれてみなうまそうに鶏肉と白いご飯を食べていた。しかしぱさぱさな御飯だけはどうしても我々に合わず残してしまった。 

 

710 

朝は早い、3時過ぎから三々五々出かけてゆく。詳しいことは聞かなかったが氷河を越えてダンブランシュにでも登るのだろうか。我々はゆっくりと朝食をとり、もう一回、地図を取出し、まわりの山々そして一つ一つの氷河を確かめる。今回の山行の第一目的をここにしてよかったと納得する。

帰り道の鎖場では、ストックが邪魔になり、雪渓の下りはストックを使っても足の確保が難しい。それでも名残惜しい山並みと氷河をかえりみながら、5時間かけてチナールに帰ってきた。

左オーバーガーベルホルンと氷河

ガイドがいないので氷河に足を踏み入れなかったが、今考えると少しでも中に入ってみたかった

帰着後大きな荷物をアローラに別送しようとポストバスの停留所に問い合せたり、ホテルに相談したがよい方法はなく、残念であったが、峠越えは次の機会に考えるとして、モアリ小屋一泊後、荷物と一緒にシエール、シオンを回って、バス、鉄道を利用してアローラに行くことにした。

 

711 

チナールから直接バスでモアリ小屋登山口まで行く。ガイドブックでは、難易度 2−3 標高差 416m 所用時間1時間半から2時間とある。グランムンテ小屋に比べればかなり楽である。

 

バス停から撮ったモアリ氷河アイスフォール

氷河の東(左側)を登る

 

     地元の中高年グループを先にやり過ごしゆっくり歩きだす。モレーンを通り過ぎたところで透明な青い大きな池が表れた。その上に掛る雪渓を注意深く横断するといよいよ急峻な上り坂になる。これが一時間以上続いてやっと小屋にたどり着いた。近代的で食堂からのアイスフォールの眺めは素晴らしい。

    夕食時には、オートルートを歩く英国人やベルギーからの若者たちと隣り合わせになり国際色豊かである。ここではフランス語が中心だが、英語、ドイツ語も聞こえてくる。女学生グループも混じり、実ににぎやかな食事風景である。大きな皿に盛ったローストビーフをそれぞれが取り出し、モリモリ食べていた。

モアリ小屋(スイス山岳会モントルー支部所有104ベッド)

トイレなど非常に清潔、女性がよく働いている

712 

今日も快晴、若者たちが出かけた後、静かな食堂で朝食。それでも6時に下山スタート。岩の急坂を一歩一歩下る。ガレ場を過ぎ、雪解け水でできた池の上のかなり急な雪渓を横切ろうとした瞬間、後ろの方でブーンという不気味な音を聞く、そのうちにパチパチと岩の飛び散る音が聞こえてきた。アツ、落石!と思っただけでその瞬間、それほど恐怖感は感じなかったが、バス停まで戻ってくるとぞっとして帰ってきた道を振り返っていた。

モアリ氷河と朝日に輝くPointes de Mourti (3564m,3529m) (小屋のテラスから)

雪解け水でできた池(地図にはない)とモアリの山々

 

鉄道とポストバスを乗り継いでチナールに入り、二つの谷の氷河と山を現地の小屋に2泊しながら、スイスの高峰と氷河を堪能してきた。世界中の氷河が退化している中で、これだけ壮観な氷河をすぐそばで眺めることができたのは幸せであった。70代のシニアでも地図とガイドブックを参考にしながら自前で計画し、実行できると自信がついてきた。ただし、歩く速度は、現地の同年代に人たちと比較してどうしても遅くなってしまう。ガイドブック記載の所要時時間の5割増し程度考えておく必要があるだろう。

    

712-15 アローラ 快適なホテルに3泊 支配人のさらりとした親切と庭が素晴らしい。 山の蔵書が豊富で、写真が美しい(シオンの城見学に出掛けたり、清澄なラックブルーへハイキング)

 

説明: C:\Users\Mochizuki\Documents\P1000255.JPG

 

715 ホテルの協力で大きな荷物をシュピーツに別送できたので、リュックとストックのみでツエルマットへ。早速ゴルナーグラドまで行きリッフェルゼーまで歩く。相変わらず、ここは日本人が多い。

716 スネガからウンターロートホルン(3103m)までケーブルカーを乗り継ぎ、往復3時間かけて

     オーバーロートホルン(3414m)まで歩く。マッターホルンだけでなく、今まで目の前に接してきた西の峰々を見る。

左からマッターホルン、ダンブランシュ、オーバーガーベルホルンと

ウンターガーベルホルンさらに右側にチナールロートホルンが見える

左下に見えるのはウンターロートホルンのレストラン(オーバーロートホルンの頂上から)

 

716-18

       シュピーツのいつもの宿で3泊(クライネシャイデックからヴェンゲンヘハイキング、エッシネンゼー周辺ハイキング、テユーン湖周遊)

       シュピーツは交通の要衝で、静かな湖畔の町。チューリッヒ空港から乗り換えなしでこの町に入ることができる。新しいトンネルが開通したおかげで、ここからのハイキングコースの範囲が大幅に増えた。 なお、スイスアルプスの私にとっての古典、「スウィス日記」の著者 辻村伊助の奥様ローザ夫人のお里は、ここシュピーツであると思っている。

 

シュピーツのホテルのテラスから

左からアイガー、メンヒ、ユングフラウ(テユーン湖周遊船の食堂から)

 

719

チューリッヒ空港午前11時着、便利なスイスパスを無事使い切る。残ったスイスフランと相談しながら、たまには高級チョコレートを買おうと店頭のお嬢さんの説明に耳を傾ける。 20日成田着

望月恭一

 

ガイドブックなど

スイスアルプス 山歩き・花紀行    市原芳夫著    本の泉社

ヨーロッパアルプス 登山・ハイキング 金原富士子著   本の泉社

地図 AROLLA 1: 50,000               SWISSTOPO

WALKING IN THE VALAIS            Kev Reynolds   CICERONE (UK)

THE SWISS ALPS                     Kev Reynolds   CICERONE (UK)

スイスの山々の全容がつかめる。トレッカーだけでなく、4000m峰を究めようとしている登山家にも参考になる。写真が美しい。

www.cicerone.co.ukにアクセスするとヨーロッパを中心にしたガイドブックを紹介している。

Schweizer Alpen Club-Welcome to Swiss Alpine Club.url からスイス山岳会所有の152におよぶ山小屋情報が得られる。