2009年秋 イイ沢調査の記録 (第3回)・最終章

 

まえがき 

約4年前(2005年と思う)のOB会忘年会にて、宮本先輩(18W)より「以前は仙ノ倉山からの便利な下降ルートとして皆が利用していた仙ノ倉谷イイ沢が近年は使われなくなったのは残念である。ぜひ昔の様な使えるルートにして欲しい。またイイ沢川原(河原とも書く)に建っているケルンの様子も見てきて欲しい」との要望が出され、実施リーダーとして筆者(荒井・38C)の名前が出された。その翌年にも同様の希望が出されたと記憶している。その熱い思いに何とかトレースしようと2008年5月上旬の残雪期を狙ってOB6名で仙ノ倉谷に入ったが残雪少なく、また沢の水量が多くてイイ沢出合にも行けなかった(下記の2.HPに簡単な報告あり)。2008年10月下旬の薪入れを利用して再度メンバーを募り6名でイイ沢遡行を試みた(詳細は下記の1.HP参照)。この時は水量多く登山靴での歩行に時間が掛かり1名のみイイ沢川原に到達出来た。この時は重要ポイントには赤ペンキマークを付け、イイ沢上部では邪魔な枝を切り落として通過し易くした。イイ沢ルート調査としては一応目的達成出来たが、仙ノ倉山からイイ沢川原の部分の状況は不明で何となく宿題が残ったすっきりしない気持になっていた。

2009年秋、仙ノ倉山荘創建75年周年記念祭を行う事になったので記念山行を企画し、仙ノ倉山→イイ沢下降ルートも加えたところ5名のメンバーが揃い実施出来た。以下にその報告を記す。

 

仙ノ倉山からイイ沢下降ルートの記録 

 

メンバー(敬称略):*櫻井 勝(35C)、*永井 孝治(38W)、*荒井 真二(38C

          平標山合流: 渡辺 乙一(42S)       *平標山乃家(泊)

          仙ノ倉山合流:清水 伸一(43M

2009年9月17日(晴れ)

  平標登山口=平標山乃家 

・櫻井、永井、荒井3名は平標山乃家に泊まり、翌日仙ノ倉山からイイ沢を下る事にして、9月17日午後早めに越後湯沢駅に集合し、路線バスにて平標登山口に向かった。

 

☆平標登山口(13:45)(標高980m)  林道より登り口・水場(14:40) 平標山乃家(16:00) (1650m)

 

・バス停近く三国小学校横の舗装された道のゲート脇を抜けここが登山道入口と考えて進むが何か変!(国土地理院地図の通りに進む)。数箇所の道標らしき杭の標識はこの舗装路では外されていた。右手に別荘を見ながら進むと別荘管理の作業員が道路補修をしていた。ここで平標登山口駐車場から上がってくる沢沿いの登山道が合流しており道標が付いている。作業員によれば舗装路は別荘地利用者用で登山者は沢沿いの道を使って欲しいとの事。これで先ほどの疑問は解決。1ピッチで水場のある登り口。量は少ないが清冽な水で喉を潤す。松手山コースから登り平標から下山の日帰り組に多数すれ違った。ここは中高年にポピュラーな日帰りコースである。快晴で強い日差しの下、階段状の登山道をさらに1.5ピッチで新築の平標山乃家に着いた。この辺りは既に紅葉が始まっていた。

   

平標登山口(別荘管理事務所前)      登山道登り口水場

  

山乃家到着                小屋からの日の出

 

・今夜の泊り客は富山方面から来た高齢の単独者、小千谷の3名(肩の小屋から縦走)と我々3名の計7名。小屋番は昔からここの管理をしている名物小屋番(?)と奥さん。夕食後は小千谷組と一杯やりながら歓談。我々は2階を独占して使うことにした。この小屋はソーラー発電システム完備で消灯後もスイッチで点灯出来るし、外のトイレは自動点灯・水洗式で快適。(余談:長い蛇の抜け殻が飾ってあるので小屋番に聞いたら、古い小屋を壊した時に沢山の青大将が床下から出て来た、今でも外の廃材置き場の下に住んでいるとの事)。

 

2009年9月18日(晴れ)

  平標山乃家=平標山=仙ノ倉山 

☆山ノ家・標高1650m(6:35) 平標山・1983m (7:30) 仙ノ倉山(8:25)

                                         

・日の出は5時半、素晴らしい天気、雲海の上に太陽が顔を出した。小屋の管理人は「仙ノ倉からイイ沢を下るコースは薮でルート無く止めた方が良い、また雨になったら平標ケルンの渡渉は難渋するので薦められない」とも云う。「我々は準備を整えているので問題なし」と伝え朝食後支度を整え出発。整備された木製階段が続く登山路を半ピッチで休憩ポイントのベンチ。ここは以前、仙ノ倉方面への巻き道分岐点であったが植生保護のため今は閉鎖されている。8時に平標山頂合流予定の渡辺氏(早朝平標登山口から松手山コースを来た)は既に待っていてくれた。若手は元気で早い。

 

  

出発の朝(左から荒井・櫻井・永井)    平標山頂にて渡辺氏合流(左端)

 ・平標山からの稜線は既に紅葉で、ドウダンツツジなどの赤い低木や草紅葉に彩られた中を快適に仙ノ倉山に向かう。驚いた事に我々平標組のあとを追いかけてイイ沢を下る予定の単独行清水氏が仙ノ倉山頂で手を振りながら出迎えてくれた。国境縦走のペースを早めて、今朝は越路避難小屋から仙ノ倉に到着したと云う。更に強力な若手が合流してくれた。

                                          

  

彩られた平標山方面を振り返る         仙ノ倉山直下を登る

  

仙ノ倉山(左から櫻井・永井・渡辺・清水・荒井)  山頂から三の字の頭へ藪の中を進む

 

  仙ノ倉山=イイ沢川原 

☆仙ノ倉山・標高2026m (8:40)   イイ沢川原・1740m (9:20)           

・仙ノ倉山頂からいいよいよイイ沢川原に向けて下る(2005年8月に関谷先輩等と国境稜線縦走で来た時の仙ノ倉山頂から三の字の頭方面は太い潅木が生えていた記憶があったが今はそれほど濃くない)。進入禁止のロープを跨ぎ、笹の浅い所から藪漕ぎ開始。深い笹や這松、岳樺、石楠花の薮をかき分けて進み三の字の頭に出る。ここには昔の踏み跡が残っていた。稜線を外さない様にルートを取り、時々太く深い這松・岳樺のなかに入り足を取られながら木登り状態でがむしゃらに下る。最後の這松帯を抜けると浅い笹原で、山頂から40分の薮漕ぎでイイ沢川原に着いた。ここには1979年4月8日遭難の碑が設置されていた。

 

  

イイ沢川原を望む素晴らしい景色     三の字の頭から深い這松帯を抜けて

  

笹は浅くなりイイ沢川原近し                イイ沢川原

  

遭難碑           イイ沢川原到着・後ろは三の字の頭

 

 ・崩れたケルンを探し、周りには石が少なく大きなケルンにはならなかったが積み直した。ここで1回目の昼食休憩。 

  

崩れたケルン               積み直し後

 

  

ケルン前のメンバー(1)            (2)

 

  イイ沢川原=イイ沢出合=平標ケルン=山荘 

 ☆イイ沢川原・標高1740m(9:45)− 薮から沢に出た地点・1600m(10:05)

  Y字状二股地点・1455m(10:43)− イイ沢出合・1100m(11:55)−

 平標出合ケルン・970m(13:00)− 山荘着・780m(14:45)

     イイ沢川原からは昨秋渡辺氏が下っているので安心、トップを任せる。川原直下は身体が隠れてしまう深い根曲り竹をつかんで滑り降り潅木のミックスした所を抜けると細い流れに出て、すぐに赤マークのあるガレ沢部に出た。ここで沢靴(フエルトシューズ)にはき替えた。

 

  

イイ沢川原から下降開始         イイ沢川原直下の急な笹

  

  

ガレ沢に出た、昨年の赤マーク      イイ沢上部二股・右手を下って来た

 

  

イイ沢入口の昨年付けたマーク        上と同じ場所・2008年秋

 

・今回は雨が少なく細い沢筋は水がほとんど無く歩き易い。イイ沢川原(標高1740m)から標高差640m下ってイイ沢出合(標高1100m)まで約2時間。ここには昨年つけたマークがある。

二回目の昼食休憩。ここからは沢とびで仙ノ倉谷を平標出合ケルンまで下るが今回は水量少なくまた、沢靴の効果もあり苦労せずにケルンに着いた。沢靴から登山靴に履き替え。若手2名は先行して山荘へ。熟年メンバー3名は今回の山行の余韻と周囲の景色を楽しみながらのんびりと山荘へ向かった。(本当は疲れてスピードが出ない!)

  

  

平標出合ケルンにて(1)            (2)                                                                         

   

熟年組 山荘下の吊橋ゴール

 

 おわりに 

・数年越しのイイ沢下降ルートを2008年5月、10月と今回の計3回で約40年ぶりにトレースする事が出来た。仙ノ倉山からの下山コースとしては危険な箇所なくやや体力を必要とするが面白いコースである。特に秋は水量少なく沢歩きが楽で、国境稜線、三の字の頭やイイ沢川原付近の紅葉は美しい。ただし無雪期はイイ沢上部の根曲がり竹や、三の字の頭付近の深い薮は登りには不向きでやはり下り用のルートである。皆が頻繁に利用すれば踏み跡が付き通過し易くなるのでぜひ利用して貰いたい。

・今回、のこぎりを持参したが全く使用しなかった(昨年はイイ沢上部の邪魔な木を切っておいた)。沢の水量は少なかったがフエルトシューズは沢とびには効果があった。草鞋より足先を痛めなくて具合が良い。

・最後に、宮本先輩の一度ならずの「イイ沢ルート・イイ沢川原ケルンの調査要望」が今回の調査山行実施の原動力になっていた事を感謝したい。

                                          

  (注記:写真はメンバー提供。標高はカシオ・プロトレックPRW-1000による参考値)

(2009.10.28、荒井真二・38C記)

 

   [参考]

         

GUTACバッジ・裏面No.72)      (ベルトバックル:宮本先輩提供)