2008年秋・仙ノ倉谷イイ沢調査の記録 (第2回)
まえがき
近年では殆んど利用されていないと聞くイイ沢の現状と数年前より宮本大先輩(18W)の強い希望であったイイ沢川原(河原)に立つケルンの様子を見に行く為に、イイ沢ルート遡行を約40年ぶりに行なった。手始めに2008年残雪期の5月上旬、OB6名でルートの確認をする積もり出掛けたが残雪が少なくやぶ漕ぎで難渋し、また平標新道出合ケルンから上流の仙ノ倉谷はスノーブリッジがなく水量も多くて進めずイイ沢出合にも行けなかった(別項ホームページ「イイ沢偵察」参照)。リベンジで秋の薪入れ時にメンバーを募り6名で再度イイ沢ルートの調査に出掛けた次第。
イイ沢川原より仙ノ倉岳方面 イイ沢川原よりシッケイの頭方面
調査遡行の記録
メンバー:永井(38W)、荒井(38C)、石川(40S)、山田(40S)、渡辺(42S)、
田中(43Ed)
2008年10月23日(薄日)
・午後よりダイコンオロシ沢出合〜イイ沢出合の中間まで偵察&足慣らし。水量が多く時間はかかったが問題なし。
2008年10月24日(雨のため山荘に停滞)
2008年10月25日(曇り)
・6:15:仙ノ倉山荘出発。
・7:20:平標新道出合ケルン着。
前日の雨で仙ノ倉谷の水量は多い。2名(渡辺、田中)は渓流シューズ使用、他の4名は登山靴。ここから、足ごしらえの差が出て来た。沢は水量が多く靴を濡らさない様にと慎重な登山靴組は沢跳びに難渋して渓流シューズ組にルート工作をサポートされても時間が掛りペースダウン。
平標新道出合のケルン ダイコンオロシ沢出合
・7:55:ダイコンオロシ沢出合通過。8:30イイ沢出合手前の二股にて休憩。仙ノ倉谷はイイ沢出合手前でモレーン状の岩石で二股の流れになっている。昔とは沢の様子が違う様だ。ここで東ゼンを登ると言う2名の若い登山者が追い抜いて右の流れを進んで行った。彼らは渓流シューズ・ハーネス・ヘルメット・ザイルと、ホンチャンの沢登り装備。我々は左の流れを行き直ぐにイイ沢出合に出た(9:10)。
イイ沢出合近し 西ゼンを望む
イイ沢出合手前の二俣左手の流れ イイ沢出合
・9:40:イイ沢に入り伏流になって水量の無くなったイイ沢の中間地点(推定)で休憩。水の無いガレ場は歩き易い(標高約1,275m地点)。谷の周囲や正面平標尾根の紅葉は最盛期で時折出る太陽光に映えて美しい。
イイ沢出合上 イイ沢出合上より
・10:35:約1,425m地点の岩に赤○のマーキングを付ける。しばらく行くと沢は狭くなり再び水流が現れ、岩は苔むして登山靴では滑って登り難い。
イイ沢伏流部 イイ沢標高約1425m地点のマーク
・10:55:Y字状の二股(約1,470m地点)を右に入る。この辺りから沢はさらに狭くなり両側から伸びた笹・ダケカンバと苔むして滑る岩で遡行は難渋し時間が掛った。
イイ沢上部二股 イイ沢上部にて
・12:00:(約1,600m地点、イイ沢川原の標高差約100m下、ここまで平標新道ケルンから休憩を含めて4時間強)。先行した渡辺はイイ沢川原に到達し、後続を暫く待ったが来ないので下山して来た。“イイ沢川原の直下付近はクマザサの藪こぎで時間が掛かった。川原のケルンは崩れていたが存在していた。また、川原には笹が一面生えていて昔の面影は無い”と言う。川原からは何処を下っても昔の様に沢の本流に戻れるとの事。暗くなるまでに沢跳びを終え平標新道ケルンに戻る下降時間を考え、また1名はイイ沢川原に達しているので遡行はここまでとし少し下って休憩後下山開始。
イイ沢上部の様子:標高約1600m地点 イイ沢上部の様子(2)
・14:00:イイ沢出合(約1,140m)、マークキング付け。
・15:00:ダイコンオロシ沢出合、大岩にマーキング付け。東ゼンに入った朝の2人組が下山して来て追い抜いて行った。東ゼン大滝は水量多くて登れず断念して戻って来たと云う。
イイ沢出合に戻る ダイコンオロシ沢出合
ダイコンオロシ沢出合(左手の流れ) 山荘前吊橋帰着
・15:15:平標新道出合ケルン着。
・16:30:山荘着。暗くなりかけた杉林の中を急ぎ、先輩諸氏により薪入れと整理が終わっていた山荘に戻った。
・夜の懇談で今日の結果を宮本先輩ら先輩諸氏等に報告してイイ沢ルート調査は一応終了した。
おわりに
雨の翌日と云うだけでなく、昔とは異なりイイ沢上部はダケカンバなどの潅木が生い茂り水の涵養力が増したためか水量が多く苔むして滑り易い沢石で予想以上に時間がかかった。山荘からの往復に10時間を要してもメンバー全員が川原まで到達出来なかったが先行した1名は川原まで行き、イイ沢ルート全体の様子は掴めることが出来、主要なポイントにはマークを付けた。40数年前と較べた体力、バランスの衰えはいかんともし難いが、はき物などの装備での補い、時期(日照・行動時間、水量など)を考えればこの沢を使った登行・下降は無理ではない。しかし、イイ沢川原から上の仙ノ倉岳 直下のダケカンバ・ササなど植生・藪の状態も仙ノ倉山からの下山ルートとして使えるかは不明で、課題は依然として残ったままではある。
(2008.11.25:荒井記)
(注)写真は参加メンバー提供。標高はカシオ・プロトレックPRW-1000による概数。
薪入れ夜の懇談にて 薪入れメンバー
2008年10月26日薪入れメンバー全員集合
以上