アイスランド 温泉とトレッキング

 

 08年7月10日ヘルシンキを発ちコペンハーゲン空港19時着。木村さん、関谷さん、永井さん、東京O山岳会の皆さんと合流。ヘルシンキのボーディングが30分遅れ コペンの乗り換え時間が50分なので少し心配したが離陸まであっという間、凄い勢いで遅れを回復してコペン空港に着いた。
 19:45発 レイキャビックまで約3時間のフライト。時差2時間で9PM空港着。お世話になるDiscovery Tours ICELAND の坂本さんの出迎えを受け市内のサガホテルまで40分程ドライブ。白夜のなか空港から市内までの景観が普通ではない。溶岩累々のなかをしばらく走るとレイキャビック市内、世界最北の首都とは思えない植林されたという木々で緑の多いきれいな町だ。
 ホテルの湯は硫黄を含んだ温泉質、バスタブでゆったりしてから寝酒で熟睡した。

7月11日 市内観光とブルーラグーン
 鳥博士永井さんの朝は早い、どうやらここは野鳥の楽園のようだ。観光の最初はチョルニトン湖。様々な鳥たちが群れていた。珍しい渡り鳥が普通に見られる、是非見てほしいところと坂本さん。赤い嘴と足のキョクアジサシは日本ではなかなか見られない、北極と南極を一年かけて渡る海鳥と鳥博士の説明。ほかにも何種類もの鴨や海鳥が羽を休めていた。
    
キョクアジサシの説明版            野鳥の群れ

 湖に沿って市庁舎がある、このなかのアイスランドの立体模型は良く出来ていた。直ぐ先が国会議事堂(アルシング)、こじんまりした建物だが世界初の共和制(アルシング)の議事堂でそれなりの格調を感じる。前の広場に独立運動の士、ヨゥン・シグルズソンの堂々とした銅像が建っている。
  
国会議事堂                    シグルズソンの銅像
ロケット発射筒のようなハトルグリムスキャルカ教会は改修中で登れない、内部はシンプル、ゴシック調を見慣れた身には新鮮な感じ、大半がルター派・プロテスタントなので という説明だった。
 金曜日なのに通りは人も多く様々なパフォーマンスが見られた。網の中に入った美人、台詞なしのコメディ、胸から血を出した死体が後ろにいたのにはギョッとした。

何を主張しようとしているのか

 イタリアンで美味いスパゲッティを食べてからドーム型の建物ベルトランへ、この最上階からの市内の眺望はなかなか。この建物は温水の貯蔵タンクとのこと。一階にはサガ博物館がある、見たかったがパス。外には4人のオブジェや管理された間欠泉がある。豊富な温泉を利用した市営プールは50mの立派な施設。バブルが弾けたということだがそんな印象はどこにも見られなかった。

ベルトランからの市内俯瞰 左手にロケット塔の教会が見える
  
オブジェ                      間欠泉(人工コントロール)
この後、ブルーラグーンに移動。

 

ブルーラグーン

 市内から国際空港方面に約40分、広大な溶岩台地のなかの地熱発電所の脇にブルーラグーンがあった。坂本さんお勧めのビューポイント2箇所で露天風呂の巨大さを概観、施設のロッカーで水着に着替えシャワーを浴びてから乳白色の温泉に入った。ぬるい湯だが中央に暑めの湯が間歇的に流出していてこの周辺は40度位。近くにミネラルたっぷりの泥があり皆さん顔に塗っている。夏休みで若者の男女が多く賑やか。渡り橋ではビールも売っている、ロッカーキーでチャージされるようだ。途中サウナで温まったりして一時間半のんびり。風邪気味のかみさんには温泉効果抜群だったようだ。
 それにしても巨大な露天風呂だ。泉質は栗駒の露天風呂・須川温泉に似ているが温度はまるで違う。暑い湯好きは日本人特有なのだろうか。たまにはぬるい湯にのんびりつかるのも悪くない。


海のような温泉

先に発電所が見える

 温泉のあとは近くのホテルで夕食、なんとアンコウがメイン料理だった。

 

7月12日(土) ゴールデン・トライアングル

 雨模様のなか9時ホテル発、東へ約50km走りシンクべトリル、ユーラシア大陸と北米大陸のプレートの裂け目と世界最古の民主議会の場を見学、雨のなか溶岩と草原・花のコースを3時間トレッキングしてからシンクベトリルのホテルでサンドイッチの昼食。
  
割れ目 左は良く観光写真にある場所 右のような所があちこちある

雨の中のトレッキング 日本のフウロ(モドキ)など沢山花があった
 その後、幅70m、落差2段32mの壮大な滝 グトルフォス見学。落ち口の岸で氷河が溶けた雄大な濁流の落下をしばらく眺めた。この滝に英国企業が発電所を計画したが、これに反対した一少女が「滝が外国資本に売られたら、滝に身を投げます」と訴え、滝が守られた と日経BPの本にあった。この少女「シーグリーズル」の小さなレリーフが帰る途中にあった。

グトルフォス全景 下部は見えない
  
少女のレリーフ と 滝の落ち口
  
 ゲイシールは間欠泉(Geyser)という英語になっているがもともとはアイスランドの間欠泉の名称。今はお休みで近くの「ストロックル」という新しい間欠泉が5-6分の間隔で豪快に熱水を吹き上げている。周辺は地熱のせいか花も緑も多く、観光客も沢山いた。
  
間欠泉近くの噴煙                この周辺はコケマンテスの花が多い
 しばらく荒涼とした道を走り「ケリズ火山湖」、雨と風が強く早々に車に戻った。

ケリズ火山湖
 この日のルートは、荒野のトレッッキングを除いてどこも人が多く人気観光エリアのようだ。


*地球の裂け目
 大陸同士のプレートがぶつかり合い盛り上がった裂け目かと思っていたら違うようだ。通常は海の底にある「海嶺」という火山山脈がたまたまアイスランドで海上に顔を出し島となった、この海嶺がユーラシアプレートと北米プレートに分かれ引っ張られて出来た裂け目、ということだ。1993年の北海道南西沖地震でこの両プレートが日本海にあることがわかる。アイスランドで生まれて分かれた二つのプレートが日本で再び遭遇していた。そんな所と思うと何とも不思議な感じがする。 地球の裂け目というと壮大な割れ目をイメージするがどうも少し違う、トレッキング中もいくつか水をたたえた崖溝があった、これも裂け目の一つなのか判然としない。

 この日の夕食は「ヴィズ・フョルボルジズ」という手長海老で有名な海辺のレストラン。ラム・ステーキも塩茹での海老も抜群の味だった。宿はHellaのラングアウ別館貸し切り。

 

7月13日(日) 氷河の間の峠越えトレッキング

 朝からあいにくの雨、アネックス9時発。滝のあるスコウガルの村から山道に入る。20分ほど走ったところでストップ。ドアが閉まらない、空気圧縮ポンプのトラブル。これが故障するとブレーキの踏力アシストが効かないから運転は無理。ここから普段は高校の数学・物理の先生で夏季アルバイト運転手ウルブルさんが大活躍。セルラーで何やら連絡を取るとつなぎに着替え、ベンツの小型バスの下にもぐり込み40分ほどで修理してしまった。後で坂本さんから彼は何種類かの車を全分解・組上げる技術を持っていると聞いた、恐れ入りました。 この国のラフロードで渡渉を繰り返す運転では彼ほどではなくてもそれなりの修理テクニックを持つことがMUSTなのかもしれない。故障・ガス欠で直ぐJAFにお助けの日本とは随分違う。

 運転再開、しばらく山道を走り水量のある沢でウルブルさんしばし思案。通常ここが車の終点のようだが修理で遅れた分を取り戻すため渡渉をトライしたいようだ。結局あきらめてここから冷たい雨とガスのなか、76歳最高齢のSさんがバスに残りほか全員で歩き出す。 後の話だがガイドのイングバーさんとKリーダーで「ほんとに行くのか」「行く」と一悶着あったようだ。
 雨とガスで何も見えないなか緩い山道を登ること一時間半、峠の小屋に着いた。30分休憩、峠からは短いアップダウンや雪渓を渡る。わずかなガスの切れ間から右にミイダールス氷河、左にエイヤフィヤトラ氷河の端が見え隠れする、氷河湖を見下ろしたり ひたすら歩く。峠の先は天気が回復しそうという坂本さんの情報に期待し、時折すれ違うトレッカーに天気を聞くが期待できそうな答えはない。狭いリッジを下りこれを登ると広い台地に出た。

しばらく歩くとトレイル終点の駐車場が見えてきた。花も多くお天気なら素晴らしい景観なのだろう、残念!!  
ながい下りの4時間だった。わずかに雄大な景観の一端が見られたのが救い。


右手に見え隠れしたミイダールス氷河 奥はガスの中

雨の中火山礫をひたすら下る

花も多くなり終点が近い  花の写真は別途

 帰りのバスはウルブルさんの運転テクニックが存分に披露された。ラフロードと渡渉の繰り返し、女性の皆さんが若い声で歓声を上げていた。
宿で着替えラングアウ本館に移動して遅い夕食、メインはチキン、ビール・ワインが美味かった。お疲れ様。

 

7月14日(月) ランドマンナアロイガール

 どうやら今日から天気は回復、Hella(ヘットラ・・・どうしてこんな発音になるのか、摩訶不思議)のアネックス9時発。90kmほど離れた川の温泉で有名なランドマンナロイガールのトレッキング。
 山道を延々2時間半ほど走ると大きな湖が見えてきた。湖の周辺はこれまで見たことの無い景観、北スコットランドに似ているがさらにワイルド。これを右折すると駐車場。キャンプサイトもありテントも多い、トイレも立派。サンドイッチの昼食、昨日がタフだったのでこの日は当初の左手の山をスキップして楽チン3時間のトレック。

  
駐車場のキャンプサイト             トレッキング出発

 大きな溶岩塊のなかを歩くと湿原に出た。ワタスゲや黄色の花が一面に咲いている。湿原から一登りすると溶岩塊、山々、駐車場から湖の方面までの大パノラマ。天気は晴れたり雨になったり強風にさらされたりと忙しいが、大パノラマを楽しむのに支障は無い。アイスランドならではの魅惑的な景観を存分に楽しんだ。周辺にはタンポポのような花が一面に咲き誇っている。山々にはトレイルがありトレッカーも多い。雄大な景観を楽しんだ後谷に下る。駐車場手前にホーストレック用のアイスランドポニーが柵のなかで頭を寄せ合うようにおとなしくしていた。


湿原のワタスゲ

小ピークからの景観 手前に噴煙を上げる溶岩塊、右手が谷 左から右に周回した

アイスランドポニー 頭を寄せて群れるところがアイスランド人に似ていると坂本さん

 湿原の木道の先に東屋がありここで着替えて川の露天風呂を楽しんだ。川に熱い温泉が流れ込んでいて川の水と混ぜて温度を調整する。熱すぎたり温(ぬる)すぎたりで適温にするのは難しいがぬるい湯でも結構温まる。内側からは焼酎と日本酒、内外からゆったりと贅沢に温めた。イングバーさんは温泉好き、最初に入り最後までいた。でも温泉で酒は苦手のようだった。

 楽チントレックと雄大でワイルドな景観、野趣に富んだ川の露天風呂と贅沢な一日の締めくくりはラングアウ本館でトナカイ肉の前菜とサーモンの夕食。ワインはシャブリ、デザートのアイス3点盛りは女性に大人気だった。アネックスに戻りロビーに三々五々、たっぷりのアルコールと摘みで遅くまで盛り上がった。

7月15日(火) ミイダールス氷河歩き

 朝から快晴。国道1号線のスコウガフォスから少し先を左に折れると221号線。終点が駐車場でミイダールス氷河の一端が南西に大きく張り出したところ。駐車場にはピッケル、アイゼン、登山靴など様々のレンタル用品が揃ったワゴン車がある。何も無くてもここで全て調達できそうだ。
 全員先端に2本爪のある10本爪アイゼンとピッケルを借りる。少し歩くともう氷河の先端、イングバーさんの手ほどきでアイゼンをつけ氷河の上に立つ。すごい景観だ、埋まった火山灰が溶けた氷河に表れ黒と白の段だら模様。所々に小さなクレパスがあり底に蒼い水をたたえている。摺り鉢状の窪みもあり滑り落ちると大変、そんなときのためかイングバーさんはザイルを持っている。
  
イングバーさん ガイドの貫禄十分       小さなクレパス

氷河 ほんの先端だがこれまで見たことの無い不思議な景色が広がっていた

氷河 黒と白の世界が広大に広がっている

 トレッキング・エピローグにふさわしい特異で雄大な景観と氷河歩きをゆっくり一時間半楽しんだ。アイゼン・ピッケルなど初めてのかみさんもへっぴり腰ながらイングバーさんのリードで無事歩くことが出来た、お世話になりました。

もう一人、4日間お世話になった抜群の修理・運転技術を持ったウルブルさんとベンツの4駆バス。



 昼はスコウガフォス脇のプチホテル。手違いで準備に手間取ったが、おかげでビールがサービスされた。氷河歩きの後のビールは格別。タラの料理も美味かった。


スコウガフォス 滝の裏側を歩ける、周辺はエゾニュウや花が多い

 締めくくりはレイキャビック サガホテルで海老とホタテの前菜、サーモンの夕食。味もサービスもいまいち。ほかの客は皆さんビュッフェ。人も少なくコース料理の対応は慣れてないのかな。
 食事の後男4人で市内のバーに出かけた。ブレンヴィンという何とも不思議な味の地酒を飲んでホテルに戻った。

*
今回のトレッキングはKリーダーと坂本さんの事前のやり取りで決まった日程・ルート、前半の悪天候から後半はアイスランドの素晴らしさを十分満喫出来た二日間だった。坂本さんにはほんとに良いスケジュールを組んで頂きました、ウルブルさん、イングバーさんともにベストマッチでした。二人のお子さんを置いて5日間お世話になりました、有難うございました。

 

アイスランド メモ

・不思議な小国:人口30万と少しの国が独自の言語を持ち政治・外交、空・陸・電力・社会保障など十分なインフラ、マスコミ、オペラハウスやオーケストラまであるとは驚き。そのアイスランド交響楽団は半端ではない、この秋日本公演が予定されている。産業面でも漁業から豊富な電力を活用したアルミ精錬へ進出しているという。子供も多そうだから就労人口は20万人ほどか。サービス業には海外からの出稼ぎもいるようだが、日本の一地方都市の人口でどんな国家運営をしているのか。
この国の常識が日本の非常識になることが沢山あるような気がする。
・この小国でもバブルがあり4ヶ月ほど前に弾けたと坂本さんが言っていた。
状況をお聞きしたら 住宅ローンの100%融資による住宅・地価の高騰、株高、クローナ高 これが弾けて株を担保に借り入れした企業が支払い困難になっている・・・こんなことから停滞ムードでクローナも30%下落したということだ。 我々はいい時に行ったということになるが、それでもすべてのお値段はとんでもなく高く感じた。
$と¥の二人負けはこの国でも同じ。
・思った以上に緑が多い、牧草地も豊富で刈り取った牧草を入れた白い袋のコンテナがあちこちで見られた。
・アイスランドが馬肉の輸出国とは知らなかった、小型のポニーもそんなに見ないしどこに輸出するほどのポニーがいるのだろう。日本も対象、馬肉は嫌いではない。九州や馬頭で食べた馬肉はもしかしたらアイスランド産だったのかなー。

 

アイスランドの食事とお酒

 今回参加した12人の平均年齢が65歳以上ということで、料理は魚が中心。朝のビュッフェも生に近いスモークサーモン、酢漬けニシンなど魚が美味い。初日の晩は機内なので二日目からの晩のメインは「アンコウ」「手長海老(ロブスター)、二人分ラムステーキ」「チキン」「サーモン」「サーモン」、最後の昼「タラ」、メインの前にスープと前菜・パン、後にデザート。スープは全体に塩味がきついが他の料理は抵抗無く美味しくいただいた。なかでも手長海老とラムステーキは美味かった。塩茹でした殻付海老をバターとオリーブオイルで味付けしたシンプルな料理。ボウルにどっさりサーブされる。海老アレルギーということで二人分ラムステーキにしシェアした。結構残して満腹。

  
手長海老                      ラムステーキ
  
ラングアウ アイスクリームのデザート    スコウガフォス昼のデザート

 ビールはバイキングという壜ビール、輸入ワインは様々。他にスピリッツ、リキュールいろいろ。 蛇口から軟水の美味い水が心配なく飲める。

空港で買ったミニチュア壜 これ全部アイスランドで製造しているの?

 

アイスランドの花々

 使い慣れないデジカメのせいか接写の花がピンボケだらけ。そのなかでそれぞれの場所での花々を紹介する。花はいずれも日本の高山・山野草と良く似ていてアイスランド特異種は少ないのではないか。
  
レイキャビック郊外の花 ルピナス?葉は〜ゲンゲ?と大型ジャコウソウ?
  
ゴールデンサークルで見た花 左は・・・フウロ、右は?
  

雨の氷河間トレッキングで見た花々 左は日本と同じアカモノ 右キンコウカと?


スコウガフォスに群れていたエゾニュウ

ミネズオウのようなコケマンテマは何処でも見られた。

                                                08年8月 山田記