追悼 安曇野

 

                千曲市桑原 桑原山 龍洞院の丑澤先輩の墓を詣でて

                            33C 深澤

 

告別の日

 ()れし地の近く安曇に逝きし兄霊安らかに岳にあれかし

 

 池田山荘五月明け方

 山疲れ目覚めは重くあかときの微睡(まどろみ)みのなか雉子鳴くを知る

 

 店で水売るを知り

 緑濃き安曇野の野に降る雨も汚染はあるや水を(あがな)

 

 山葵田にて湧水で冬も育つと

 

 真冬にも滋味清らなる湧き水は雪下に潜む山葵育む

 

 五竜岳に登りしこと

 きさらぎの二月五竜を()じしあと遠見の尾根の滑り懐かし

 

 湧水の溢れる量に触れ

 降り積みし雪地に伏して湧き出でる安曇野の田は(ひで)りするなし

 

 詩碑はあの辺りと伺い

 水ぬるみ地は下萌えを兆すとも早春賦の里風は()てつき

 

 常念坊を仰ぎ見て

水鏡(ゆき)()の僧は幾とせも田面にぎわう安曇(あど)の春()

 

 最後の入莊、退莊の昨年十月二五日剣持様宅前にて

 道野辺に赤々と咲くサルビアを見入るを撮りしが永久(とわ)の別れに

 

 彼岸にて問う術もなく

 看とりなく今際(いまわ)の思い託するは遺せし偉業百の登攀