カナディアンロッキーとエスプラナーデ・トレッキング(The Canadian Rockies and Esplanade trekking

40S 山田和夫

 

 7月7日から16日までカナダのレイク・ルイーズ周辺とエスプラナーデ山群のトレッキングに出かけた。東京の山岳会が主体の13名パーティ(女性7名、男性6名)でリーダーのKさんが大学山岳部の後輩だったことから声をかけられかみさんと一緒に参加した。
 コースは8日:Lk.Louise南岸に聳(そび)えるFairview Mountain 2744m、9日:Lk.Louiseから38km北のBow湖から6km先のHelen Lakeまでの往復(Helen Lake Dolomite Pass)。 10-14日はヘリを使ったEsplanade Hut to Hut Trekking、北のビスタ小屋(2150m)にヘリで入り翌日メドウ小屋(2195m)まで、12日は縦走中最高峰のカポーラ・マウンテン(2650m)を往復してサンライズ小屋、ここで2泊し14日へリで下山。
 全コース素晴らしい天気に恵まれ、雄大な山群・氷河と咲き乱れる様々な花々を存分に楽しんだ。予想以上の残雪もベテランガイドの適切な判断とリーダーの雪上訓練の効果で殆ど雪の経験のないかみさんもトラブル無く完歩出来たのには感謝。同行したリンおばさんの料理には全員大感激だった。ただ小屋周辺と縦走休憩時に群がる蚊・ブヨ・アブの大群には往生した。



 概念図


次から個別のコース、花々について記す。

 

Fairview Mountain

 トレッキング初日(7月8日)は軽く足慣らしの予定が、いきなり高度差1000mFairview Mountainに登ることになった。Canmoreのホテルを830出発。R1をレイクルイーズまで約1時間走行。巨大なヴィクトリア氷河を後方にした湖はこのエリアを代表する景観だ。この湖畔の左手に聳える山がFairview Mountain、2744m。10時出発、針葉樹林帯のゆったりした山麓の道をサドルバックまで登る、途中からドウダンツツジ、ウエスターンアネモネ、ドラムンドアネモネ、インディアン・ペイント・ブラシ、ホワイト&ピンクヘザーなどの花が現れ楽しい。12時サドルバック、昼食。ここから頂上までは1.4kmの急登、途中の雪渓を慎重にトラバースして約1時間で全員頂上に立った。
頂上からの景観は素晴らしい、少し雲は多いがまさにFairview。南にMt.Temple 3543mとマクドナルド氷河,テンピークの3峰がその先に見える、西はビクトリア氷河、眼下にレイクルイーズの端が見える。強い風で寒いなか、30分ほど雄大な景観を楽しんで下山。結構ハードな足慣らしだった。


  
レイクルイーズ                Fairview Mountain
  
頂上からMt.TempleMcDonald's Glacierは雲に紛れている  Ten Peak


この日の花幾つか


  
ドウダンツツジ?針葉樹林帯       Mountain Marsh Marigold
  
Western Anemone
           White Mountain Heather
アネモネは大型のハクサンイチゲ、ヘザーはコケモモやツガザクラに似ている

 この晩はホテル近くの中華料理・北京飯店、味・価格とも満足

 Canmoreの象徴、Three Sisitersと左下に中華料理店、9時過ぎても明るい

 

Helen LakeHelen Lake Dolomite Pass

 7月9日はレイクルイーズからIcefields ParkwayR93)をBow湖まで北に走り、ここから6km先のHelen Lkまでのトレック。樹林帯を緩く迂回気味に登るとインディアン・ペイント・ブラシ、ヘザーなどが綺麗だ、黄色のカタクリ:グレイシャー・リリーが現れたときは歓声をあげた。「エスプラナーデにはもっとすごい群落があるから」とガイドのH女史は先を急ぎたい様子だが次々と現れる花々、山火事で焦げた木々、Bow湖対岸のCrowfoot GlacierBow Peak2868mの景観に遅れがち。一登りして樹林帯を抜け草原に出ると前方にDolomite Peak2782mの岩山が存在感を持って現れた。

 

  
インディアン・ペイント・ブラシ           グレイシャー・リリー
    

Crowfoot Glacier               山火事の木々


Dolomite Peak


北に迂回して草原を歩く、花は豊富。アネモネ、マウンテン・マーシュ・マリゴールド、ウエスターン・スプリング・ビューティ、ホワイト・グローブ、バターカップなどが咲き乱れている。マーモットも現れ楽しませてくれた。クリークを渡り、一歩きでHelen Lakeに着いた、12:55。風が強く寒い、池は氷が残っていた、6。数組のパーティが昼食をとっていた。昼食を済ませて1:33、同じ道を花を愛でながら下山。途中ビューポイントで大休止、池との標高差は300m程だがここは強い日差しで暑い。4時駐車場着。


  
マウンテン・マーシュ・マリゴールド    ウエスターン・アネモネ
  
ウエスターン・スプリング・ビューティ   ヘレン・レイクから観たボウ・ピーク

ヘレン・レイク


 夕食はしばらく日本食とお別れということで、日本レストランのセットメニュー。天ぷら、刺身、すしなど結構なボリュームだった。

 

Esplanade Hut to Hut Trekking(1)

 「世界一きれいな尾根歩き」:そんなキャッチフレーズは大げさではなかった。7月10-14日は今回のメインコース、エスプラナーデ小屋歩きを楽しんだ。場所はカナディアンロッキーの西、BC州ゴールデンの北西にある。カナダ横断鉄道と併走してR1を走りゴールデンを過ぎて右に入ったところにヘリポートがある。ヘリの離発着ごとにすごい土埃、簡易舗装でもしたらと思う。かまぼこ屋根の小屋で順番になるまで待機。初めてのヘリ、注意事項に従い乗り込んで10分ほどでビスタ小屋前に到着。小屋はきれいな池に沿って建っており近くにサウナ小屋、少し離れてトイレがある。標高2150m、東にロッキー、三方は残雪の山に囲まれた素晴らしい環境だ。ヘリは定員5人、3往復し全員揃って遅い昼食。予想以上に残雪が多い、午後からは小屋近くの雪渓で雪道歩きの訓練、上り下り、斜め横のトラバース、かみさん含め雪に馴れない何人かにも充分な訓練だった。



赤い屋根のビスタ小屋、手前に池 向こうの尾根はカナディアンロッキー
  
ヘリ到着                   雪上訓練

 

小屋は1階がLDKとスタッフの寝室、2階6室(2人×4、3人×2)がゲスト用、山小屋としては快適なベッドだ。2人用トイレは少し離れたところにある、ボッタン方式だがまあ綺麗だ。  雪上訓練でかいた汗をサウナで流した。3人定員でこの小屋だけ着替えスペースがあった。大きな薪ストーブが燃えており5分もすると汗が吹き出る。ストーブの上の湯と大きなバケツの水で洗面器3杯目安で汗を流す。外は虫が待っている、蚊・ブヨの攻撃をかわすのは至難の業だ。


  
サウナ小屋と内部(サンライズ小屋)

 

スタッフはベテランガイドのH女史、長身のレイ君とキッチン担当リンさんの3人。カナダ人のリンおばさんの腕はなかなか、最初の晩は照り焼きチキン・スティームドライス・おから(キビ・アワ?)の炒めもの・サラダなどなど。醤油もある。ヘリで上げたビール、ワイン、ウイスキーもたっぷり、食事の後はゆったり、語り歌も出たりで貸切の山小屋は更けていった。


  
 ビスタ小屋の夕食

 

Esplanade Hut to Hut Trekking(2)

 7月11日、トレック2日目快晴。スタッフの朝は忙しい、先ず水汲み、料理、7:30からの朝食が済むと昼のサンドイッチの準備、部屋の掃除・ベッドメイク、サウナ・トイレ掃除と大変だ。負担を軽くと翌日から部屋・床掃除はゲストが担当した。嬉しいことに毎朝、御飯やビーフンの入った味噌汁がサーブされた。昼食は各自好みのサンドイッチを作る、NZのトラック歩きと一緒だ。
 9:45予定より少し遅れて出発。メドウ小屋まで7km、多い雪がどう影響するのか。昨日雪上訓練した雪渓を越しアネモネなどが咲き乱れるなかH女史を先頭に進む。夏道は雪に覆われているところが多くその都度、彼女が慎重にルートを決めしっかりステップを切ってくれる。雪庇の張り出した長い雪田をトラバース気味に登るとコルに出た。1時、ここで昼食。西にはコメディ氷河、シャープで目立つアイコノクラスト、北にはこの山群の最高峰サー・サンフォード、東はロッキーの大パノラマ。


  
左手のコルを目差す            コルへの雪田を行く、雪庇が大きい

飛行機雲がよく見られた


 カール状のくぼ地を下り登り返すと長い雪田が夏道を覆っている、慎重なルート・ファインドで急傾斜だが雪巾の短い場所を選びステップを切る。H女史のサポートでスリリングな雪の梯子を下りた。 エレクトリック・ブルー・レイクなど幾つかの池を迂回して会津駒を想わせるようなコメツガ、モミと湿原に囲まれたメドウ小屋に5時着。
 この日の花はモス・キャンピオン、尾根に結構見られた。10平方cmになるのに2-300年かかるそうだ。ヘアベル(桔梗)、チョウノスケソウ、湿ったところはマーシュ・マリゴールド、スプリング・ビューティ、バターカップなど。


  
モス・キャンピオン              チョウノスケソウ(White Dryad)


 夕食のメインはサーモンのバター焼き、醤油をかけて食べるといけた。

Esplanade Hut to Hut Trekking(3)

 3日目はサンライズ小屋までの6km、途中このコースの最高峰カポーラマウンテンを往復した。小屋から1kmほどでニュークリアブルーレイク、どうしてこんな名称になったのだろう。コルの手前に大きな雪田が控えていた。しばらく停滞、H女史は雪田、レイ君は反対側の尾根を偵察。雪田にトレイルを作ることで作業開始、結構な長さだ。そのうちコルに初日のガイドだったユウ君のいるパーティが現れた。彼が反対側からスコップで作業開始。30分足らずで立派なトレイルが完成した。ベテランプロガイドの判断はさすが。


  
ニュークリアレイク                コル手前の雪田

 

コルで昼食とパノラマを楽しんだ後、荷物をデポして左手のカポーラマウンテンを目差した。明瞭なトレイルが無く各自ランダムに登る。ピーク手前の緩やかな雪田で先行パーティが下りてきた。ガイドリーダーは「カナディアンロッキーの高山植物」を編集したユウジ君、H女史としばし情報交換。雪田の上のピークは20m弱の岩稜、2グループに分かれて登攀。全員2650mのピークに立ち360度の大パノラマを堪能した、2班頂上は2時。



カポーラピークを征服して勢揃い、後ろの岩稜がピーク


 小屋まではのんびりしたトレイル、小屋手前の池の斜面にグレイシャーリリーの群落があり感激。
 今日の花はH女史から珍しいと紹介されたモスジェンティアン(リンドウ科)、カポーラの登りにあったWoolly Pussytoes(猫の足:チチコグサ属)、何といってもグレイシャーリリーの群落。これまでの花も沢山あった。


  
モスジェンティアン                猫の足

グレイシャーリリーの群落

 

小屋では揚水ポンプトラブルもKリーダーの支援で解決。

夕食のメインはパスタ、他にサラダなどなどデザートありでリンさんの腕前には皆さん感服。ビールと焼酎が誤送されたのは誤算だがアルコールもほぼ充分。

 

Esplanade Hut to Hut Trekking(4)

 サンライズ小屋は連泊。軽装で近くのパノラマテラス往復の後、アバランチピークに登った。
パノラマテラスは小屋から1.5時間ほどの軽いハイク。テラス周辺のグレイシャーリリーの群落が素晴らしかった。この根は熊の好物、要注意ということだ。小屋に戻り北側のピーク、アバランチピーク2430mへ、小屋からの標高差約300m。コルまで行くと昨日登ったカポーラMt.がピークの岩陵を乳首におっぱい山のように見える。ピークまでは岩の多い登り、雪崩のパスを見下ろしながら約40分で頂上。コロンビア大氷原の先に見えるMt.アルバータは槙有恒が1925年初登頂した山、H女史・Kリーダーから再会したアイスアックスの話があった、知らなかった。


  
アバランチのコルからカポーラを望む  アバランチ頂上遥かにコロンビア大氷原
  
バターカップ                 咲き終わったウエスターンアネモネ

 

早めに小屋に戻り夕食までのんびり、リンさん最後の晩餐はミディアム・テンダーロイン・ポークにポテト、オニオンソティー・ソース、赤・緑パプリカ・カリフラワーなどの焼き野菜、デザートは果物に手作りビスコッティ。少なくなったアルコールにH女史から赤ワインの差し入れは貴重だった。

 最後の朝はサンライズ見物、朝寝組それぞれ。
 ヘリでの下山は全ての荷下ろしがすむまで3時間近く要した、改善の余地がありそうだ。バンフの宿Aspen Lodgeでゆっくりバスタブにつかった後買い物など。打ち上げはSilver Dragonの中華、ほっとする味旨かった。

 ベテランガイド、信頼感あるリーダー、和気藹々よそ者を受け入れてくれた皆さん、素晴らしい天気と山々と花々。思った以上に歩いたかみさん共々大満足の山行だった。皆様に感謝。