知床の山:羅臼岳、斜里岳

7月24日〜27日

40S山田和夫

 7月24日から27日、知床に出かけた。 23日の東京震度5で停まった交通機関も回復し、格安のバースディチケットで羽田12:40発、中標津まで飛んだ。 空港でトヨタレンタカーのヴィッツを借り 2:40出発。 先ず標津から野付半島に行くことにした。雲は低く、半島に着いたころから雨が落ちてきた。車は少なく日曜日の観光地とは思えない。道の両側にハマナス、ヒオウギアヤメ、エゾカンゾウ、センダイハギなど沢山咲いている。干潟にミズナラが立ち枯れたナラワラを右手に見て少し走るとネイチャーセンターに着いた。センターからトドマツの立ち枯れたトドワラが見える。さらに灯台前の終点まで走り引き返した。運が良ければタンチョウに会えるようだが天気が悪い。

 両サイドの花を楽しみながら半島を後にした。

 ナビをウトロにセット、羅臼から霧の知床峠を越え知床五湖まで快適にヴィッツ4WDを走らせた。

五湖の途中でエゾシカが道路脇に何頭も現れた。車を止めても驚く様子はなく悠々としている。

 駐車場4:30着、小雨。 一湖に向かって歩き出す、人もまばらだったが二湖に近くなると団体客が増えてきた。二湖の先にはエゾシカが2頭悠々と歩いていた。花はエゾコウホネ、終わった水芭蕉など。三湖以降は熊出没で立ち入り禁止。水芭蕉の球根を食べに熊が出てくるとのことだが?

 

エゾシカ:知床五湖への途中                   クマ出没立ち入り禁止

 

 今晩の宿 岩尾別YHは五湖から15分ほど、5:40着。途中鹿3頭、YH横の沢では大角が悠然と歩いていた。YHは初めての体験、6時夕食、8:30からミーティングといわれシーツを渡された。 部屋は2段ベッドで4人用、客は少ないようで一人で使えとのこと。NZの山小屋のようだ。

 6時に食堂に行くと15,6名既に席にいた。半分が欧米系外国人、私の隣もNYの26歳高校教師、サイクリングで旅をしている。教育問題を中心に話した、日本の若者にNEET、フリーターが増えているのは目的意識が持てないから、徴兵制度のある中国、韓国、欧米の若者にはメンタル、フィジカル両面で負ける・・・など。 米国はベトナム以降徴兵が義務ではなくなった、少し私の認識不足もあったが楽しい会話だった。1500円の海鮮バーベキューも結構いけた。ビール3缶。

 ミーティングはアクティビティのQ&A、そこそこで引き上げた。

 5時起床、ガスが濃い。カップラーメン、おにぎりなどで朝食。6時YH発、岩尾別温泉の手前に路駐。既に十数台の登山者と思われる車が停まっていた。木下小屋で記帳、6:25分。

しばらく樹林帯のジグザグ急登が続いた後オホーツク展望に着いた、7:00。ガスが濃く小雨で全く眺望は利かない。間もなくヒグマ注意の看板に出た、アリの巣を食べに来るとのこと。ダケ樺のなかを暫く歩くと「弥三吉水」7:25着、途中で追い抜いた髭のガイドと8人の熟年男女が着き賑やか。「何時に頂上に着きますか?」との女性の問いに、「11時目標 ただ大沢の雪渓次第」と答えていた。 このパーティとは頂上から下りてきて岩清水の手前ですれ違った、目標から1時間弱遅れの頂上、約6時間の登りとなる。団体の場合は相当余裕を持った行動計画が必要だ。

 7:40 弥三吉水出発。平坦な極楽平を歩き「銀冷水」8:30着、この水は雪渓の融水で飲料には適さないとのこと。間もなく大沢入口、頂上まで2kmと表示があった。ここから雪渓の登り、斜度はなくアイゼンは不要。ガスはあるが視界は悪くない、途中からエゾコザクラ、エゾツツジ、エゾノツガザクラ、イワヒゲなどが現れた。雪渓が終わるとさらに花が賑やかになり、チングルマ、エゾキンバイもぽつぽつ出てきた、キンバイの花はずい分大きく直径で5cmはありそう。イワギキョウ、マルバシモツケなどが加わり一段と華やかなうちに羅臼平に着いた、9:30。

  

弥三吉水               大沢入口と雪渓:この雪渓をしばらく登る

 

何とガスが切れ青空が出てきた。羅臼岳は見えないが反対の三ツ峰は小さな雪渓を抱き綺麗に見えている。ハイマツに囲まれた羅臼平は広々と気持の良いコルだ。一休みしてから緩いハイマツのなか頂上を目差す、花もチシママツモグサ、コイワカガミなど加わる、頂上のガスも切れた。 ハイマツ帯が終ると岩清水、岩から浸みだした冷水が実に旨い。 ここから岩場の急登になる。 頂上直下は少々緊張、10:30頂上。良いお天気だが残念ながらオホーツク、 国後は何れも雲の下  去年の利尻山と同じだ。切り立った頂上はそこそこ広く7,8人が休んでいた。 缶ビールでのんびり昼食、11:05出発。 羅臼平でコーヒー休憩、12:00発。 花の楽園を楽しみながら下る、大沢の雪渓からは花も少なくなる。銀冷水着 12:30。 弥三吉水12:35 大休憩。あとはガスのなかをひたすら下り2:10木下小屋着。

 往復8時間弱、予想以上にタフだったが羅臼平から上は天候に恵まれ、花も多く良い山だった。 硫黄岳への縦走者は少ないようだが挑戦意欲をそそられる、機会があればトライしてみたい。

 

エゾコザクラ

 コザクラはいろいろ種類がある。レブンコザクラは花が一つの茎に幾つもついていた、これは一つ。ハクサンコザクラは?

 

エゾノツガザクラ

 雪渓の上部から羅臼平周辺に群落で咲いている。花は小さいがピンクの絨毯を作っている。

黄白色のアオノツガザクラも多く見られた。

 

エゾツツジ

 花はツツジだが、茎・葉は野草で背は低くツツジの印象は薄い。花は大きく華やか。

 

エゾキンバイ

 エゾキンバイは花が大きく華やか。あまり群れて咲いていない。斜里にも同じ大きな花があった。

 

イワキキョウ

 イワキキョウは鮮やかな紫で存在感がある。羅臼平周辺で一杯咲いていた。

 

ミネズオウ

 ミネズオウは小さな5弁の紅紫色が可愛らしい。

 

 「ホテル地の涯」脇の沢沿いに無料の露天風呂がある、最初の風呂はぬるいということで奥に行ったが見落として滝の上まで行ってしまった。小さな風呂だ、先客が一人、午前中カムイワッカの湯に入ってきたとのこと、ぬるいのと湯までの沢登りに往生したと言っていた。 まさに知床。

  

イワブクロ                       チシマクモマグサ

   

羅臼岳の中腹から見た三ッ峰               羅臼平から頂上を見る

 

時間は早い。知床自然センターまで走り、フレペの滝を見ることにした。駐車場から10分ほど歩くと草原の入口に着く、大きく伸びた蕨が一面の草原をつくっている。この中を展望台まで歩く。

写真で見慣れた滝が現れた。岩盤の地下水が流れ落ちて滝になっている。セグロカモメが舞っている。遊覧船がゆっくり戻っていった。帰りのルートではエゾシカがのんびり草を食んでいた。

ウトロで観光船に乗ろうかと思ったがさすがにくたびれた。ウトロの先にあるオシンコシンの豪快な滝を眺めて斜里町経由清里まで走った。清里イーハトーブYH着5:30。ペンション風の綺麗な宿だ。個人部屋を予約したが、何のことはない4人部屋の一人使用だった。相部屋の2千円増し。中年ご夫婦の経営で食事は町でということのようだ。大田という居酒屋・食堂を勧められたが寿司が食べたい。事前に調べた「かどや」に送ってもらったが超満員、諦めて結局隣りの「大田」に入った。YHから来たといったらセットですかと聞かれた。揚げ物を焼き魚に変えてもらったセットの他に冷奴、刺し盛を追加。生ビール2杯、冷酒。セットは厚岸の牡蠣、これは旨かった、厚岸の海は水温が低く夏でも養殖が出来るとのこと、海鮮サラダ、茶碗蒸し焼き魚にイクラ丼と味噌汁がついて1260円は安い。YHの人気メニュー、納得。刺身もまあまあ、〆て4160円は満足。

 3日目朝5時起床、コンビニのおにぎりとスープ・野菜ジュースで朝食、天気は良いが台風接近が気になる。登山口の清岳荘に車を停め記帳、6:45出発。 暫くして熟年ご夫婦を追い越した。

下二股 7:30。 ここから沢コースに入る、水簾・羽衣・万丈、最後が霊華の滝と楽しめる。

沢道はしっかりした踏み後があるが時折迷い込み引き返す場所があった。上二股 8:55着。

沢水は少ない、小さな落ち込みにビールを冷やして出発。低いダケ樺の急登が続き、この間何組か下りてきた。ガレ場の胸突き八丁を登ると眺望のきく馬の背に出た、頂上が目の前にデンとある。残念ながら羅臼岳は雲のなか、清里も雲で見えない。晴れているうちにと頂上を目差す、花は羅臼ほどではないがナナカマド、キンバイ、タカネシオガマ、ミヤマオダマキ、イワギキョウ、キスゲなど結構咲いていた。 頂上 9:35。 誰もいない、眺望もガスで今一。日は差しているので暫く昼寝。 近くにウメバチソウが咲いていた。 

  

ナナカマド:二股上部から南斜里方面          馬の背からの斜里岳:この後ガス

  

タカネシオガマ:頂上近く                   イワオトギリ:頂上近く

 

10:15下山、10:45上二股。冷やしたビールで昼食。後ろからもう登ったんですか と声をかけられた。朝追い越したご夫婦だった。随分時間がかかっている、苦労したようだ、奥さんのズボンが破れていた。馴れない人には少しきつい沢だ。

  

ウメバチソウ:頂上                        竜神の池

 

一人で食事をしていると後ろに何かいる気配がする、キタキツネだ。 2m程のところで食べ物を欲しそうにしている。目を向けるとこそこそ隠れしばらくするとまた現れる。可愛いが餌をやらないように を守ることにした。

 

 帰りは尾根道を下る。途中「竜神の池」の案内板があった、時間もあるし行ってみることにした。10分ほど下った雪渓の下に小さな池があった。周辺を緑の苔が覆って薄いブルーの神秘的な池だ。しばらく眺めてもとの道を戻る、尾根に出ると風が強くすごい勢いでガスが流れていた。登山者は少なく前後誰もいない。熊見峠 11:50。 ここからひたすら急下降、これを登るのは大変だ。下二股 12:30。 清岳荘 13:25。   4、5時間の簡単な山かと思っていたがとんでもない、結構タフな山行だった。  この山は知床には入らないようだ、何処が境界になるんだろうか?

 

 車で20分ほどの清里の温泉施設「緑風荘」で汗を流した、町営の立派な施設だ。

 以前霧で見られなかった摩周湖は今日も雲が低く霧の中、諦めてシラルトロ湖の宿まで小雨の中をドライブした。宿は釧路湿原の北「憩の家かや沼」、湖周辺は良い散策コースがありそうだが雨も強く諦めた。準公営のこの宿はかけ流し湯の温泉が目玉と聞いた。 露天風呂もある広く気持の良い湯だ、ゆっくり山の疲れを癒した。部屋で缶ビールを飲みながら汗を引っ込めた。

夕食は宿泊費から期待しなかったが、サービスも含めなかなか素晴らしく大満足。 ビール・酒・朝食が付いて8,236円はハイシーズンとしては随分安い。良い宿だった。

 

 最終日は台風が接近しており朝から雨、知床半島に最接近する時間が午後2時頃、中標津の出発が2:10、欠航かと思い空港に電話したら予定通り運行とのことだった。

折角の釧路湿原、視界は悪いが釧路川沿いにコッタロ展望台まで行ってみた。ラムサール条約登録地のコッタロ湿原や、南に釧路湿原が見渡せた。広大なヨシ・スゲの湿生草原は知床とは違う北海道だ。雨の中誰もいない、早々に車に引き上げた。

 塘路湖の脇に「土佐商店」の看板が見えた、NHK「プロジェクトX」に出演した土佐さんの店だ。ワカサギの甘露煮など土産に買う。 ここから最後のドライブ、道道?221号線は素晴らしい。緩くうねる丘、防風林、牧草、ジャガイモ畑、麦秋、牧舎など美瑛にも負けない景観をつくっている。

台風は東にそれたのか雨も小降り風も弱い。対向車も殆どない、北の景観を充分に楽しんだ。

空港では天候待ちの表示だったが予定通り羽田に向け離陸した。

                                                  05年 8月記