山からの便り (29W関谷)
 私の所へ来る年賀状の中に山からの便りがある。山登りで出会った人達からの年賀状、学校山岳部の先輩・同輩・後輩達からの年賀状である。山岳部の仲間達は毎年忘年会、又は学校の山荘へ行った時、仲間達は山へ行った最近の話が出るので、これらの仲間達からの年賀状に山の事は書いてあるが比較的少ない。しかし、山登りで出会った人達、ある山小屋で雨のために閉じ込められて、何泊もしている間に話合った人達、何の連絡も無しに再び山で出会った人達、ある山小屋に同宿し、次の日も次の山小屋に又同宿した人達、これらの人達からの年賀状、北は北海道から、南は四国・九州と範囲は結構広い。そう言う人達とは、仲々その後会う機会も少ないまゝ時が過ぎて行った。
 逢うことの少ない山友達から毎年来る年賀状の中には、前年山へ行った総纏めの報告として、所狭しと山の記録が一杯書いてある。ある年賀状の中には、今年の山行き予定まで丁寧に書いてあるものもある。それらの年賀状を一枚々読んでいると、その人達と出会った時の事が想い出される。ある年賀状の中には、元気よく山登りを続けている人達もいるかと思うと、何かの都合で去年は山登りが出来なかった等と千差万別である。読んでいる内に、羨ましくなるような山旅をしている人もいて、私自身刺激されて行って見たくなるような山もあった。これらの人達と、次に出会う機会は困難であるが、山の便りだけは楽しみにしている。
 年賀状以外での山の便りもある。山へ行って来た報告を、絵葉書や写真を含めた手紙が届くことがしばしばある。そうなると私も相手の趣味に合わせて、高山植物・季節毎の山の写真を葉書大に伸ばして、返事を書く事にしている。
 横浜の土肥さんから、去年末(1995年)重い封筒が届いた。土肥さんはセミプロ山岳写真家であり、封筒の中身は、仲間達で作ったカレンダーであった。土肥さん自身が撮った写真が第一面にあった。早春燕岳からの槍ヶ岳の写真である。この山岳写真カレンダーを、本箱の上に飾って毎日眺めていた。

1996年4月9日 記
2002年2月4日 修正