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アンテナ


アンテナは電気エネルギーを電波として放出する、あるいは電波を電気に変換する道具です。
早い話が電波の出入口です。身近にあるのはテレビ、BS、FM放送用ですね。

ではまずアンテナの性能の紹介から。
ここでいう『放送局』とはテレビやラジオ局だけでなく、電波を発信する場所を指します。また基地局ともいいます。

■指向性

指向性とは、アンテナの向き(方向)に対する感度特性を表すものです。

◆無指向性アンテナ

全方位、均一な感度を持ちます。

不特定多数の受信者を持つ放送局、あるいは、移動する受信者(タクシー無線など)を対象とする放送局のアンテナはこのような特性を持つ必要があります。タクシーは常時不特定の場所を移動するからです。

放送局の背後に山や高層ビルなどの障害物がある場合には適しません。


◆指向性アンテナ(1)

この例ですとアンテナの前後で最大感度になります。逆に両側では最低感度です。

 


◆指向性アンテナ(2)

これはアンテナの前面で最高感度となります。
受信する人が一定の方向にいる放送局、あるいは特定の放送局の電波を受信する場合はこの特性があった方が有利です。特定方向以外から到来する電波は受信する必要がないからです。

テレビアンテナはこの特性を持ちます。
なぜならテレビの放送局は方向(電波の到来方向)が特定できるからです。

 


■利得(ゲイン)

アンテナはそれ自体で電波を増幅する作用のあるものが作れます。
これにつきましたは八木アンテナの項をごらんください。


■アンテナの基本

アンテナは使用する周波数によってその大きさ(長さ)が異なります。基本的には電波の波長の半分の長さが必要です。

電波の場合、波長=300,000,000 ÷周波数(m) になります。

例えば300MHzの周波数の時波長は1mですから、50cmの電線があればアンテナとして使えることになります。

実際にはこんなに単純ではありませんが、基本はこうなります。


タクシーの屋根にこのようなアンテナが置いてあるのを見たことがあると思います。これは波長の1/4をアンテナ素子としています。では残りの1/4はどこにあるんだ?
と思われるでしょうが、この1/4は自動車のボディを使っているんです。ボディですから実際には1/4ではなくて、ずっと長くなります。

■八木アンテナ


(日本アンテナ)

八木アンテナは正式には宇田・八木アンテナといい、東北大学の宇田新太郎、八木秀治の両博士の発明によるものです。戦前は日本よりむしろアメリカで高く評価されていました。軍需用(航空機、船舶)としてです。
何故か今日では宇田博士の名前はほとんど呼ばれず、もっぱら八木アンテナと呼ばれています。

代表的なものはテレビアンテナです。

テレビアンテナ(地上波)の形状はよくご存知かと思います。1本の中心となる棒に何本かの細い棒が直角に並んでいますね。

これがアンテナ素子でして、本数によって3素子(エレメント)とか、5素子などと呼んでいます。左の図は5素子になります。

基本的には1/2波長の輻射管(送信機や受信機に直接繋がる)の前に、1/2より若干短い素子(導波管)を、輻射管の後ろに1/2より若干長い素子(反射管)を1/4波長の間隔で並べます。一番先端にある導波管が前方になります。

これには不思議な働きがあります。

導波管も反射管も、入ってきた電波を輻射管側に跳ね返す作用があるのです。

導波管でキャッチされた電波は走り幅跳びのように輻射管に行きます。また輻射管を通り越して反射管にキャッチされた電波は折り返されて輻射管に届くのです。

素子数が多くなるほど反射されて輻射管に届く電波が多くなる(限界はあります)ので、結果としてこのアンテナには電波を増幅する働きがあります。これがアンテナの利得です。

 

また利得が大きくなると(素子数が増えると)指向性も変わってきます。

このように素子数が多くなると、指向性は鋭くなり、前方からの電波の受信、前方への電波の送信に有利になります。


■なぜ八木アンテナはテレビアンテナに使われるのか

私たちが日中家の中で本が読めるのは、太陽光がいろんなところで反射して窓から家の中に入ってくるからです。
電波も光同様反射するんです。
便利な点は、この反射した電波が家の中にも入ってくるので屋外にアンテナを架設しなくともラジオが聞けることでしょう。

音声は反射電波でも充分受信できるのです(電波が強いところなら)
しかし、映像はそうはいきません。

左の図をご覧ください。
テレビ局から出た電波Aは直接テレビアンテナに入ります。ところが電波Bは家の背後にあるビル(山)に反射してからアンテナに入ったとします。

電波Aと電波Bは同時にはアンテナに届きません。電波Bの方が少々遅れて届きます。この電波A、Bを受信すると映像は二重に見えてしまいます。
いわゆるゴーストというものです。

電波Bがビル(山)で反射することを防ぐことはできません。できることは電波Bのような背後から入ってくる不用な電波に対して感度が悪くなるアンテナを使うことなのです。
八木アンテナは背後の感度は極めて悪いためこのような場合に使えるのです。

《注意》
テレビの画像受信は音声受信よりずっと微妙な要素があります。
電波状態が悪く、映りが悪いときでも音声なら問題なく受信できることがあります。


■フォックス・ハンティング

今でもあるのか知りませんが、私が若いころはアマチュア無線家を対象に『フォックス・ハンティング』という遊びがありました。
本当の狐を狩出すわけではありません。
主催者側が無線の発信機をある場所に隠して、参加者はその所在地を突きとめる遊びです。

フォックス・ハンティングの理論は簡単です。
左の図で青い丸が目的物です。位置は固定されていて動きません。

参加者はある地点Aで目的物から発信される電波をキャッチしてその方向を調べ、地図に線を引きます。

これはアンテナ(八木アンテナ)を回転させて、受信した電波がもっとも強くなる方角を調べるのです。
左で方向が水色の線だとすると、目的物はこの線上(A-a)に存在します。

次に参加者は場所Bに移動して先ほどと同様にB-bの線を引きます。

すると目的物はこの二本の線の交点になるのです。
このようにして一番早く目的物の場所を突き止めた人が勝ちになります。


■パラボラアンテナ


日本アンテナ製

BSの普及とともにパラボラアンテナも身近になってきました。
パラボラアンテナの原理は光のレンズなのです。

 

凹レンズに光をあてると、光はレンズの焦点に集中します。

 

パラボラアンテナもこれと同様に受信する場合は電波は焦点に集中します。このため利得は八木アンテナ以上になります。

送信用として使う場合は逆に焦点から放出された電波は背後の反射板で反射され、前面に放出されるのです。


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