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ジュール熱


■W(ワット)

再び電力のことを書きます。
500Wとか100Wとか、結構日ごろ使う言葉ですよね。
でもわかっているようでわからないと思います。
わかるのは、W数が大きいと電気料金も高くなるということでしょうか? 

W(ワット)と言うのは物理で言う「仕事量」を指します。

物理で言う仕事とは、ある質量の物体をある場所から別の場所に移動させることを指します。
500Wのモーターを使った掃除機は100Wのモーターを使った掃除機の5倍の仕事能力(吸引力)があるんです。500Wの電熱器は100Wの電熱器の5倍の熱が出るのです。

実際にはこんな単純な計算ではありませんが。


では電熱器を例にお話しましょう。
ある抵抗に電流を流すと必ず発熱します。この熱を
ジュール熱といいます。
この時の電力は 電流(I) × 電流(I) × 抵抗(R) でした(P=I2 R)。1秒あたりです。

ここで電力に応じた発熱があります。
どれほどの熱量かといいますと、電力を4.2で割った結果が発熱量になります。

ですから500Wの電熱器からは毎秒 500(W) ÷ 4.2 = 119カロリーの熱を発生させます。(カロリーは熱量の単位です。)

1カロリーとは 1CC水の温度を1℃上昇させる熱量です。
20℃、100CCの水を100℃に沸騰させるに必要な熱量は 100 CC × (100℃−20℃) = 8000カロリー ですから
500Wの電熱器を使えば 8000 ÷ 119 = 67秒で沸騰する計算になります。

実際には電熱器で発生した熱量全てが水の加熱だけに使われるわけではなく、周囲の空気や電熱器本体の加熱などにも使われますから時間はずっと長くなります。ちなみに電熱器だけではなく、電球はジュール熱を光に変えるためのもので、ジュール熱の応用です。

電熱器は熱を発生させることが目的の道具ですが、それが目的ではない電気器具、たとえばテレビやステレオでも長時間使っていると本体が暖かくなります。これは本体内部でジュール熱が発生するためです。

電熱器でない限り熱など発生しない方が良いのですが、こればかりはどうすることもできません。100Wの電気器具なら毎秒23.8カロリーの熱が発生するのです。

この熱は電気器具の寿命に大きな影響を与えます。どんなものでも熱が生じれば劣化するのです。ですから電気器具の消費電力は小さければ小さいほど良いのです。(エアコンや掃除機のようにある程度の消費電力がなければどうしようもない器具もありますが)

《注意》
電気製品の電力効率(消費される電力の何%が本来の目的のために使われるか)は決して高くありません。

例えば電球です。
電力効率が100%なら、光るだけで熱を一切出さなくなるのです(←ちょっと理解に苦しむかもしれませんが)
実際には、例えば100Wの電球など、熱くてさわれませんね。


■ 送電線

山間部や郊外に行くと塔が建っていて送電線があるのを見ます。
家庭用の電気は100Vか200Vですが、送電線の電圧は2万〜50万Vもの高圧です。(モノによって異なります)

なぜこんなに高圧なのでしょうか?
それには理由があります。
電気を送る時、電圧は高いほど有利なのです。

送電線は全長何Kmになるのでしょう。その電線が持つ抵抗も相当大きいに違いありません。
この式を思い出してください。

電力(P)= 電流(I)2 × 抵抗(R) (P=I2 R)

1000Wの電力を送る時、100Vで送れば10Aの電流になりますね。
送電線の抵抗Rを2Ωとしましょうか。

この時、電線の持つ抵抗で消費される電力は P=I2R ですから 102×2=200W もの電力が消費されます。
これはただ熱になるだけのまったくムダな電力なのです。
一方これを1000Vで送るとすれば電流は1Aです。電線の抵抗は電圧には無関係ですから電力は 12×2=2W で済むのです。

200Wと2Wでは大違いです。
このように電圧が10倍になれば電力はその2乗に反比例して小さくなるのです。
ですから、送電線の電圧は高いほど電力のムダがないのです。

送電線で送られる電気はどんどん小さく変換されて、電柱の上に乗っているトランスのところでは6600Vになっています。
それが100Vや200Vになって家庭に入ってくるのです。


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