Index ゴロピカ工房 目次

CD(デジタルの基礎)


CDのことを話すには、アナログとデジタルの話からはじめなくてはなりません。退屈な話ですので、ごく簡単に説明しようと思います。

ごく大雑把な説明ですが、アナログ機器では音声信号は電圧(電流)の変化がそのまま音量の変化になります。電圧(電流)の値が大きいほど大きな音量となるのです。
これに対してデジタル機器では内部の信号はすべて0と1を使った2進数で表現します。

■CDの録音工程です。

録音したものからCDへ記録する工程はこうなります。(重要な部分だけ抜き取っています)

録音マスターテープ→AD変換(サンプリング → 量子化)→CDへ記録

また、CDプレーヤー からはこうして『音声信号』を取り出しています。

レーザー光照射→CD面での光の反射→受光器→DA変換→アンプへ

CDの構造につきましてはここに書きました。

ではまずCDへ信号を記録するところから話しましょう。
でもその前に退屈なお話をしなくてはなりません。


音楽CDは言うまでもなくデジタル録音の一つです。
デジタル録音では音の大小、周波数の違い・・・・すべてをデジタル信号で処理しています。
デジタル信号はご存知の方も大勢いると思いますが、2進数の世界なのでまずこれを理解する必要があります。

■2進数と10進数

通常私たちが使う数は0から9までの10種類の数字を使う10進数です。
位は右から1の位、10の位、100の位・・・・と10倍づつ大きくなっていきます。
例えば125という数字の各位の大きさは、それぞれ1、2、5です。1の位でも、10の位でも、その数値の範囲は必ず0から9までの間ですから10通りの値を持つことができます。

10進数で125という数字は下の表のようになっています。
早い話が、10進数でいう125とは1×100 + 2×10 + 5×1 なのです。

数値 計算式 結果
1の位 5 5×1 5
10の位 2 2×10 20
100の位 1 1×100 100

これに対して2進数は0と1の2通りの値しか持つことができません。1の次は桁が上がって10(読み方はジュウではありません。イチ・ゼロ(レイ)です)になります。この桁が上がることは、10進数で言えば9の次は桁が上がり、9はリセットされて0になることと同じです。
10進数で0から9までの数字を2進数で表すとこのようになります。

10進数 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
2進数 0 1 10 11 100 101 110 111 1000 1001

例えば10進数の6は2進数なら110です。

10進数でしたら、右側から1の位、10の位、100の位、1000の位でした。10倍づつ増えますね。2進数なら右側か1の位、2の位、4の位、8の位、16の位・・・と2倍づつ増えていきます。

私はイチ・ニー・ヨン・パー・イチロク・ザンニ・ロクヨン・イチニッパー・・・などと憶えました。
2進数の110 を10進数になおすには、10進数の時と同様にこのようにします。

数値 計算式 結果
1の位 0 0×1 0
2の位 1 1×2 2
4の位 1 1×4 4

結果をたし算(1×4 + 1×2 + 0×1)すれば、ちゃんと6になりますね。


■実際には

2進数とはデータがあるか・ないか、YesかNoかの世界です。
コンピュータをはじめとするデジタル機器の内部では、多くの場合2進数は電圧があるか、ないかで区分けされています。

ただし、CD自体は電気回路ではありませんので、光を反射する、しないで区分しています。光の反射を取り込んで電圧があるか、ないかに変換しているのです。

さて電圧は0.8V以下と2V以上で区分されることがあります。(この分類方法が全てではありません)
0.8V以下を0として、2V以上を1 とする方式を正論理、0.8V以下を1として、2V以上を0とする方式を負論理といいます。デジタル機器はこの二つの論理を組み合わせて回路が設計されています。

ではデジタル機器の信号処理に2進数ではなくて10進数を使ったらどうなるでしょう?
たとえば0〜0.5Vを0、1.0〜1.5Vを1、2.0〜2.5Vを2、3.0〜3.5Vを3・・・・としましょうか。これは理論的には可能かもしれませんが、現実には不可能に近いことです。

と言いますのは、意外かもしれませんが、電圧はちょっとしたことがキッカケでしばしば変動するからです。
上の例では電圧の許容範囲はわずかに0.5Vです。
0.5V以上の電圧変動があればデータが変わってしまうのです。
この点あらゆる10進数は2進数で表現が可能ですから、 0.8V以下と 2V以上で2分割する方法はとても合理的なのです。

音楽CDを録音するとき、電気信号(1、0)を記録するピットというものが作られます。
そして音楽CDを聴くとき、CDプレーヤーの内部ではCD(ピット)にレーザー光をあててその反射があるか、ないかで1と0を区別しているのです。


■デジタル方式のメリット・デメリット

1.メリット

@途中で波形が歪んでもノイズが乗っても元のデータを復元出来る

アナログでは波形が途中で歪んだら修復不可能で、その歪がそのまま音になって聴こえてしまいます。また途中で乗ったノイズも除去は困難です。
しかしデジタルならば 1か0かが判断出来れば良いので歪んだ波形から元のデータを抜き取ることができます。もちろん限度というものがありますよ。

Aコピーしても劣化しない

これは説明するまでもないと思います。アナログで録音したテープをダビング(親→子)し、それをまたダビングし(子→孫)・・・・これを続けていくと最後には何が何だかわからない音になってしまいます。
その点、デジタルは0と1が判別できれば何回でもコピーできるのです。

B機器を低価格化・小型化しやすい

CDプレーヤーは発売当初安くても20万円位しました
半導体部品の高集積化や大量生産に乗って今では数千円のCDラジカセがあるほどです。

C編集・加工・伝送が容易

デジタル・データのためパソコンなどを使って容易に編集・加工ができます。
またインターネットでダウンロードするのも簡単にできます。

2.デメリット

これはLPが好きな人がよくいいますように、口では説明できない音質上の要素があります。
下記しますようにサンプリングがあるためかもしれません。


以上、↑単に2進数について若干説明したに過ぎません。
これ以降さらに面倒なことを書きますが、アナログ信号をデジタル化するのに必要なことですのでがまんして読んでください。

■サンプリング

音楽信号はアナログ、CD内部はデジタル方式です。このため、録音した音声信号(アナログ)をデジタル信号に変換しなくてはなりません。そのためにはアナログ信号をある一定の時間間隔で区切って、その瞬間、瞬間の電圧を抜き取るのです。この一定の時間で区切ることをサンプリングといいます。

簡単に順序を書きますとこのようになります。ここで言う『信号』とはすでにテープ等に録音されているアナログ信号を言います。
またテープに録音しないで直接マイクで収集した音を処理することもあります。LPでしたらダイレクトカッティングですが、CDの場合は何というのでしょう(笑)

まず左の図のようなアナログ信号があったとします。信号は音声でも、音楽でもなんでもかまいません。(赤い線)
縦軸は電圧、横軸を時間の経過とします。
この信号を1秒あたり、44100個分割します。
変なたとえですが、ハムを薄切りに切るようなものです。あるいは、ゆで卵を切る道具のようなものをイメージしてください。

左の図は分割することを強調するために、信号の大きさ(縦方向です)に関係なく上下均等に線を書きました。

実際には信号の変化に沿って分割しますので、左の図のようになります。モノは違いますが、ゆで卵を切れば、断面の大きさは卵の位置によって違いますね。
この分割が標本化(サンプリング)です。
1回のサンプリングとその次のサンプリングの間隔(時間)は

1 ÷ サンプリング周波数

になります。サンプリング周波数が1000Hz(1秒間)なら 1/1000秒なのです。

元の信号は折れ線(曲線といった方がいいかな)グラフのようでしたが、サンプリングをした後は棒グラフのようになります。

それと言うのもサンプリングの時間が極めて短時間なため、棒グラフとみなせるのです。

この棒グラフを横に並べれば、1個のグラフの横幅(サンプリングの間隔時間)が小さければ小さいほど、元のグラフ(赤い線)に近くなることは容易にお分かりかと思います。
サンプリングの周波数は大きければ大きいほど元の信号に近づくのです。
現在の方式ではサンプリング周波数は44100Hzです。
ですから、この棒グラフ1個の横幅(時間)は1÷44100 = 0.0000227秒になります。言い換えればCDとは、1秒間に44100回、0.0000227秒に一回づつ音声信号を記録しているのです。

先ほどグラフの横幅(サンプリング時間)が小さければ小さいほど、元のグラフ(赤い線)に近くなる書きましたが、その様子をあらわしたのが左の図です。
めちゃくちゃなコジツケですがご容赦くださいm(__)mペコリ。

(A)のような電気信号があったとします。時間は1秒です。

これに対して1秒間に2回のサンプリング(周波数は2Hz)を行ったのが(B)で、4回のサンプリング(周波数は4Hz)を行ったのが(C)です。

棒の高さ(電圧)は適当ですが、(B)に比べて(C)の方がより元の信号に近いことがお分かりかと思います。それでもわかりにくいですね(笑)

サンプリング周波数とその結果得られる精密さはある程度比例するのです。しかし、ある程度の周波数以上になると今度は人間の耳がその差を判別できなくなります。『ある程度の周波数』とは、元の信号の周波数の2倍程度のようです。
そこで現在は44100Hzと決められているのです。

逆をいえば、サンプリング周波数が44100Hzということは、その半分の22000Hz以上の周波数がCDに録音されていてもサンプリングできないということなのです。

またサンプリングは『ある時間間隔』で行われるため、必然的にデータの取りこぼしがあります。つまりサンプリング時間間隔内で起こった元の信号の変化には対応できず、変換しきれない部分があるのです。

これはCDの限界なのです。
現在CDは圧倒的に普及していますがその反面、LPの愛好者も少なくありません。
の理由の一つはこのサンプリングで発生する音質の違い・・・具体的には言えませんが・・・・にあるのかもしれません。  


■量子化

さてサンプリングが終わっても一個一個の棒グラフの大きさ(高さ)は、依然として『分割された音声信号・波形』なのです。
これをこれをデジタル信号に変換しなくてはなりません。
これを量子化といいます。

この時重要なのはビット数です。

ビットとは2進数でいえば0か1であり、ビット数が大きいほど精密に信号の電圧を表すことができるようになります。

1ビットでは0か1の2通りが表せます。

2ビットでは(つまり二桁の2進数では)・・・・

10進数 2進数
0 00
1 01
2 10
3 11

このように00から11まで、10進数で言えば、0〜3までの4通りの数を表現できるのです。
これをまとめますと

1ビット= 21 = 2桁
2ビット= 2 = 4
3ビット= 2 = 8
4ビット= 2 = 16
5ビット= 2 = 32
6ビット= 2 = 64

・・・・

16ビット= 216  = 65536
17ビット= 217  = 131072
18ビット= 218  = 262144
19ビット= 219  = 524288
20ビット= 220  = 1048576

このようにビット数が1つ増えるごとに表現できる桁数は2倍になっていきます。

ちょっと想像してみてください。

身長が170cmの人がいたとします。
3桁表示なら170、4桁表示なら170.2、5桁表示なら170.18・・・という具合に、桁数が増えるほど正確に元データを表示できますね。

これと同じことなのです。
桁数はモノサシの目盛と考えてもよいでしょう。
目盛が粗いと正確に測れずに誤差がでます。この誤差は聴感上は雑音となります。これを量子化雑音といいます。
目盛が細かいほど誤差が減りますから同時に雑音も減るのです。CDはLPに比べて雑音が少ないといわれるのはこのためです。

通常のCDは16ビットで録音されますが、これに対してで20ビット録音というのがあります。
差は4ビット。この場合、理論上は 24=16 倍の精度になるのですが・・・・はてさて、どんなものでしょう。


■AD変換

以上のサンプリングと量子化を行うことを総称してAD変換(アナログーデジタル変換)といいます。AD変換器はオーディオ用でなくとも単体でも販売されていますが、安いもの(オーディオ用ではなくて)は数千円からあります。

さてこのように音声信号がデジタル化されました。
次はディスクへの『録音』です。


■リマスタリング

量子化の最後のところで『通常のCDは16ビットで録音されます』と書きましたが正確には、44100Hzでサンプリングする、と付け加えるべきです。ここで注意すべきは、ビット数やサンプリング周波数が大きくなるほど、より正確にデジタル化できるということです。

繰り返しますが、スライスハムに例えればサンプリング周波数はハムの厚みであり、ビット数はいかにハムの直径を正確に測定するか、ということです。

古いアナログ録音のCD化にあたっては、もともとのアナログ録音テープ(マスターテープ)に記録されている情報を可能な限り正確・精密にデジタル化しようとする動きが出てきました。これがリマスタリングです。

レコード会社が違っても、その基本的な方法は共通しています。
ビット数とサンプリング周波数を大きくすることです。
それぞれレコード会社によって違うようですが、一例をあげるとこうなります。

  ビット数 サンプリング周波数(Hz)
DECCA 24 96000
東芝EMI 20 88000

Index ゴロピカ工房 目次