0-V-2
久しぶりの真空管ラジオです。せっかく作るなら短波も聴きたいと思い、昔懐かし、0-V-2を作りました。0-V-2の0とは、高周波増幅部が0、つまり高周波増幅なし。Vは真空管を使用し、2は低周波増幅が2段ということです。(1-V-2なら高周波増幅1段、真空管使用、低周波増幅2段となります。)
回路は下図のとおりです(クリックで拡大)。
回路は、標準的で特別なものはありませんが、一応説明すれば・・・。
同調回路のコイルは自作で、詳細は後述します。
スプレッドバリコンは、並3ラジオ用のミゼットバリコンです。昔の0-V-2キットでは、このバリコンの羽を抜いて10pF程度の容量にしましたが、現在入手難なのでそんなことはやりたくありません。そこで20pFをつないで見かけの容量を減らしました。初段6AU6のスクリーングリッドは、20Vのツェナーダイオードを2個使い簡単ですが40Vに安定化しました。また低周波増幅部は、0-V-2の標準回路では6BM8などですが、手持ちはないし、わざわざ数千円も払って買いたくもありません。ここは何本か持っている12BH7にしました。出力は、どうでもいいことですが、0.5W位は出るでしょう。
低周波増幅部は音質を求めるアンプではないので、抵抗もコンデンサーも手持ちの部品を適当に使いました。■コイルをつくる
LC同調回路の同調周波数(受信周波数)は下記@式となります。
単位は、周波数はヘルツ(Hz)、コイルのインダクタンス Lはヘンリー(H)、コンデンサーのキャパシタンスCはファラッド(F)です。しかし実際のラジオ放送の周波数は数百KHz〜数MHzであり、インダクタンス、キャパシタンスはそれぞれμH、pFですので@式はあまり実際的ではありません。そこで式を多少修正して、単位をKHz、μH、pFがそのまま使えるようにしたのがA式です。@に比べて誤差が出ますが、実用上問題はないと思います。
さて@、A式より、受信周波数を変えるには、CかLを変えれば良いことがわかりますが、ほとんどのラジオではCにバリコン(可変容量コンデンサー)使い、その容量の変化で受信周波数を変えることになります。例えばバリコンの容量範囲が9倍(※)なら、@、A式より受信周波数は最低と最高で3倍となります。かつて中波ラジオの受信範囲が535KHz〜1605KHzで3倍でしたが、その理由はこれです。
※単連バリコンの容量の可変範囲は、350〜30pF位なので実際には10倍程度はあります。
では、中波放送を受信するには、コイルのインダクタンスはどれほどになるでしょう。
東京におけるNHK第一放送の周波数は594KHzですから、最低受信周波数を550KHz、バリコンの最大容量を360pFとすると、A式からLは約230μHとなります。230μHのコイルを作ることになりますが、必要なインダクタンスを得るにはコイルの半径(直径)、巻線の太さ、巻き数などのデータを基に計算します。計算式はいくつかありますが、一例をあげれば下記のとおりで、実に面倒なものです。
しかし、今では必要なデータ情報を入力すれば、インダクタンスからコイルの巻き数を計算してくれるホームページが検索できます。それによると、コイルの直径は30φ、エナメル線の線径0.4φ、巻き数130回で230μHが得られることがわかりました。(実際には後述のとおり230μHにはならなかったので、このサイトの紹介は略します。)
今回中波だけではなく、短波も受信できるようにしました。
そのためには、中波用とは別途に短波用のコイルも作ってスイッチで切り替えることになります。しかしアマチュア無線の受信機のように、受信周波数範囲が広くなると、それぞれの周波数帯域に合わせたコイルが数本必要になり、配線は実に複雑で面倒なものでした。さらに短波放送のように周波数が数MHzにもなると、部品の配置や配線技術で特性がかなり変わってしまうのです。
こうした手間を解決してくれたのが、コイルとスイッチを組み合わせて一つの部品としたコイルパックです。(上の右画像)
トリオ(現ケンウッド)は、かつては高周波機器の専門メーカーで、アマチュア向けにコイルパックも販売していました。■プラグインコイル
今回の0-V-2のように、単純なラジオで手軽に周波数を切り替えるために、昔はラジオ少年向けにプラグインコイルというものが販売されていました。これを中波や短波の受信周波数帯域ごとに作り、真空管を交換するような感覚で取り替えて、受信周波数帯を切り替えるのです。
しかしコイルの筒(ボビン)は、現在では入手難なので自作することにしました。
コイルのデータ
中波 短波 G〜K 130 10 K〜E 5 3.5 E〜A 15 3 0.4φエナメル線
密着巻き0.5φエナメル線
スペース巻き※中波は別途調整
プラグインコイルボビンと作り方 作ったコイル短波用(左)と中波用(右)
まず不要になったST管を壊してベース部を取ります。ベースを残してガラス部分を割って中身を取り除くのです。
次にラップの芯を適当な長さに切り、ベースを合わせて黒いケント紙を巻いてコイルボビンにしました。ラップの芯を使ったのは、丈夫なので力を入れて線を巻いてもつぶれないからです。
ラップの芯とベースの直径は必ずしも同じではありません。私の場合、芯の方が若干小さかったので、芯に水で薄めた糊をつけてコピー用紙を巻いて調節しました。
完成しました。
しかし中波用のコイルのインダクタンスが大幅に不足して、130μHしかありません。作り直すは大変面倒です。そこで苦肉の策。
割り箸にフェライトコアを接着し、ボビンの中に挿入。220μHになりました。10μHほど少ないですがこれでよしとしました。短波用のコイルは、0.5φのエナメル線を使い、スペース巻きとしました。等間隔に巻くため、ホームセンターで買った自在ブッシュ(画像の白い棒のようなもの)を6本ボビンに貼り付けてあります。
インダクタンスは130μH。少なすぎる! フェライトコアで調整 受信の結果ですが、中波はNHK第一、第二。TBSと文化放送が受信できました。
ただし、TBSと文化放送の出力は大幅に低下しています。
また短波では、ラジオNIKKEI(6.055MHz他)や周波数がわかりませんが、中国や北朝鮮の日本語放送が受信できました。